今回紹介するのは、脳とイメージの相性の良さです。勉強するうえで、じつは落書きが効果的だということを知っていましたでしょうか。正しい方向に「落書き」を利用すれば、記憶力は高まるのです!
新刊『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』では、脳の仕組みを活用し、4回連続記憶力日本一、日本人初の記憶力のグランドマスターになった著者による世界最高峰の勉強法を紹介。記憶力が左右する試験、資格、英語、ビジネスほか、あらゆるシーンで効果を発揮するノウハウを徹底公開します。

脳とイメージはとても相性がいい

「記憶術とは端的にいうと何か?」と聞かれたら、「イメージ(絵)で覚える技術」と回答します。

 イメージを使って覚えるからこそ、短時間で100以上の単語や、数百ケタの数字を一度に記憶できるのです。

 勉強の成績がよい人たちは記憶術の知識がなくても、無意識のうちにイメージを使って勉強しているのです。

 ではなぜイメージなのでしょうか?

 これもやはり脳の特性なのです。脳は文字や数字などの情報を覚えるのは苦手であるのに対し、映像を覚えるのは得意なのです。脳とイメージはとても相性がいいのです。

 たとえば、最初にある映像のスライドを見てもらいます。次に最初に見たものとほとんど同じだけれど、ほんの少しだけ一部を変えたものを見せます。すると、ほとんどの人が最初のスライドとは違うものだということに気づきます。

 それほど脳はイメージに対し、敏感なのです。

 ところで皆さんは、学生時代に教科書やノートに落書きをしたことはありますか?

 私も実をいうと、日本史や世界史の教科書に載っている歴史上の人物の顔写真にヒゲを描いていたクチです。

 通常落書きといえば、勉強に集中していないことの象徴のように思われていますが、脳の仕組みからいうと、落書きは記憶にとってじつに効果的なのです

 なぜなら、落書きとは絵であり、先ほど述べたように脳は映像に敏感だからです。

 とはいえ、勉強内容とまったく関係ない落書きは問題外で、勉強に関係するものでなければ意味がありません。描き込むのは、テキストやノートの中で覚えなければならない重要箇所です。

 絵のうまさは必要ありませんが、可能なら色もつけると脳が受けるインパクトがさらに強くなるのでおすすめです。

 話はそれますが、本書でも色の効果を利用しています。

 本文中に青色が使われていますが、青には鎮静効果があり、時間の感覚を短くさせるといった集中力を高める作用があるのです。

 話を元に戻すと、このように絵や色は記憶を引き出すことが必要になる試験のときに効果を発揮してくれます。描き込んだ絵が呼び水となって記憶を引き出す役目を果たしてくれるのです。

 実際に描くときは、ルールをあらかじめ決めておくと、何を書こうかと考える時間が省けます。

 あまり凝ったものにする必要はなく、単純な連想を使ってぱっと描くのがコツです。

 表現しているものの形がわかる言葉であれば、そのままの絵を描けばよいのですが、勉強の中で出てくるのは固有名詞や専門用語がほとんどです。

 その場合は、用語に含まれている言葉の意味から連想して絵に変えるとよいでしょう。

 たとえば、ヨーロッパの気候の一つに「地中海性気候」というのがありますが、私ならば「地中海」という言葉からなんとなく「イタリア」を連想するので、そこから国の形である長靴を描き込むかもしれません。

 しかし、なかには文字からは意味がとれない言葉もあります。

 意味がわからない英語やその他の外国語からできているカタカナ言葉は、そのままでは何のことかわからないため、ちょっとした工夫をする必要があります。

 古生代のある時期のことを「カンブリア紀」と呼びますが、私はその言葉の意味がわかりません。

 こういうときは言葉遊びの要領で、その文字の中から意味のとれる言葉をひろってイメージするのです。私ならば、「カン」と「ブリ」から「魚のブリのラベルがついた缶詰」にするかもしれません。

 でも長靴は気候とはまったく関係ないし、ましてやブリの缶詰などは、何ひとつ元の言葉の要素が残っていないじゃないか、と言われるかもしれません。しかしそれで構いません。

 なぜならば、この方法の主な目的は記憶のタグ付けにあるからです。

 記憶とは覚える力ももちろん大切ですが、同じぐらい「思い出す力」も重要です。

 ところが、覚える作業に注力しすぎて思い出すための工夫をおろそかにしていることが多いのです。すると、頭の中に詰め込むだけ詰め込んだのはいいけれど、それをタイミングよく思い出せないという現象が発生するのです。

 皆さんも必要な情報をすぐに見つけやすいように、テキストに「ふせん」を貼ったりすると思います。それと同じことです。

 絵が「ふせん」の役割を果たし、たくさんしまってある記憶の中から必要な記憶を探しやすくする目印となってくれるのです。

 なぜその絵にしたのかを脳が覚えているので、その絵を見ると脳は元の言葉を再現することができます。