向上したパワーとトルクをリア2輪で受け止めるために、400Rより20㎜ワイド化したリアタイヤも利いている。リアがドシッと踏ん張ってアクセルを多少ラフに開けたくらいでは、挙動が乱れる心配はない。逆にベタッとしすぎで走りがつまらなくなることもない。エンジンだけでなくコーナリングも実に気持ちいい。
鋭い回頭性にはスカイライン独自のDAS(ダイレクトアダプティブステアリング)の進化も寄与しているようだ。ぐっと走りの一体感が高まっている。わずかな位相のズレを感じるのは駐車する際などの極低速走行時のみ。走り出してしまえば気にならない。
乗り心地は及第点だ。テストコースでプロトタイプに試乗したときも快適性は高かったが、公道で試乗しても裏切られなかった。正直400Rよりも乗り心地は良好である。
これには挙動を把握しやすくすることを意識したという足回りのチューニングをはじめ、タイヤがランフラットでないこと、ホイール変更によるバネ下の軽量化などが効いているに違いない。耐フェード性を高めた専用パッドを装着したブレーキは、減速度がコントロールしやすく街中でも扱いやすい。
GTとしての資質もきわめて高い。スカイラインは、初代GT(S54系)が誕生した1964年から、一貫してグランドツーリング性能を磨いてきた。NISMOはその完成形というイメージである。レーシングテクノロジーを活かした空力とシャシー技術の融合は、ドライバーを虜にするドライビングの歓びと、優れた快適性を見事に両立した。
高速巡行時の安定性は高く、高速コーナリング性能も抜群。ボディは、車速が高まると路面に吸いつくというと少々大げさだが、押さえつけられるような感覚がある。見た目の雰囲気やエンジンフィールから“男気あふれるクルマ”だと感じていたが、しばらくドライブして、実は“上質性”も兼ね備えたオールランダーだと認識した。
NISMOは“スカG”の伝統を継承した究極のGTカーを目指して開発された。限定1000台は、執筆時点ではまだ入手可能という。2024年に発売されるスペシャルなLimitedも気になるところだ。
(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一郎 写真/山上博也)