過去の大地震でも被災地では犯罪が頻発した。すでに過酷な環境にある中で、犯罪の被害に合うことは何としても避けてほしい。どのような犯罪が想定され、それらにどのように対処すればよいのか。防犯対策に詳しいセキュリティ・コンサルタントの松丸俊彦氏に「被災地における防犯対策」について話を聞いた。(防犯コンサルタント 松丸俊彦)
最強の防犯対策は「3人1組チーム」
私は仕事で犯罪統計を追いかけているのですが、地震をはじめとする災害の被災地では、刑法犯全体は減る傾向があります。しかし、ある犯罪だけが急増します。それは窃盗です。
年初に発生した能登半島地震でも、すでに窃盗事件が発生しています。人がいなくなった家屋や商店から金品を盗むものから、避難所で他人の金品を盗むものまで多発しているようです。
また、過去の事例では災害の避難所で起こる犯罪は、窃盗罪だけではありません。盗撮やのぞき、強制わいせつ、強姦といった性犯罪が起こることも想定されます。
今回は、避難所での窃盗・性犯罪から貴重品や自分自身を守るためにできることをお伝えいたします。
これは窃盗と性犯罪の両方への対処にも通じる点ですが、一人で行動することを避けましょう。
窃盗対策では、トイレなどでどうしても貴重品のそばを離れないといけない場面があるはずです。その際に、信頼できる人に代わりに見張ってもらうのです。家族で避難した場合は、家族が最も望ましいでしょう。
家族以外で見張りを任せる場合は、知らない人よりは知っている人、できれば復興後も生活圏を共にする人が望ましいでしょう。関係が継続する人に対して、窃盗をはたらくことは考えにくいからです。ただし、顔見知りやご近所さんが絶対に盗みをはたらかないわけではないので、注意が必要です。
さらに、2人1組よりは3人1組のほうがより安全です。1人がトイレに行くときにもう1人についてきてもらって、3人目の人が貴重品などを見守ることができるからです。単独行動はなしで、可能であれば3人以上でチームを組むようにしてください。
防犯効果が大きい「見せる警戒」とは?
避難所での生活は、人口密度が高く、密着した生活になります。また、隣の人との間仕切りが簡易的なパーテーションしかないケースも多く、隙間が生じやすい環境でもあります。そのため、盗撮やのぞき、強制わいせつといった性犯罪が発生しやすいのです。