ソーシャルメディアの使用時間削減で
仕事もメンタルヘルスも上向きに?
仕事の合間にInstagramやTikTokを見ることはちょっとした気晴らしになるように思われるが、この行為は、実際には仕事の満足度を低下させている要因なのかもしれない。
ソーシャルメディアの使用時間を1日わずか30分減らすだけで、その人のメンタルヘルス、仕事の満足度、仕事へのコミットメント(責任を持って仕事に積極的に関わっていくこと)が向上したとする研究結果が報告された。ルール大学ボーフム(ドイツ)メンタルヘルス研究・治療センターのJulia Brailovskaia氏らによるこの研究の詳細は、「Behavior and Information Technology」に12月8日掲載された。
ソーシャルメディアは、今や多くの人の生活の重要な一部となっている。しかし、ソーシャルメディアにはFOMO(fear of missing out)を助長する可能性のあることが研究で示唆されている。FOMOとは、ソーシャルメディアを常にチェックしていないと、何らかの情報やイベントを見逃して自分だけ取り残されてしまうのではないかという不安や恐怖を感じる状態を指す。
Brailovskaia氏らは、ソーシャルメディアによる現実逃避は、短期的には気分を向上させる効果があるが、人の集中力などを奪う中毒性のある行動を促進することによって、長期的には悪影響を及ぼすのではないかとの考えのもと、ソーシャルメディアの1日の使用時間を減らすことで、労働者の仕事に対する満足度やメンタルヘルスなどがどう変わるのかを検討した。
試験に参加したのは、166人のフルタイムまたはパートタイム労働者で、いずれも仕事には関係のないソーシャルメディアを1日35分以上使用していた。参加者は、7日間にわたり1日当たりのソーシャルメディアの使用時間を30分減らす群(84人、平均年齢29.38歳、介入群)と、普段通りに使用する群(82人、平均年齢30.06歳、対照群)にランダムに割り付けられた。
試験開始時と介入後、介入から1週間後の3つの時点でオンライン調査を行い、仕事に関連する要素やメンタルヘルスについての評価を行った。
その結果、介入群では仕事に関連する過負荷、ストレス、FOMO、ソーシャルメディア使用への依存が有意に低下した一方で、仕事の満足度、仕事への関与、およびメンタルヘルスは有意に向上したことが明らかになった。