亀裂の入った中国と台湾の旗写真はイメージです Photo:PIXTA

台湾総統選が1月13日に投開票される。本稿では、台湾で起きている中国による選挙介入を例に、日本で同様の事象が想定されるのかを考察するとともに、特に「認知戦」における日本が抱える課題とその対応方法について、カウンター・インテリジェンス(防諜)の実務家が解説する。(日本カウンターインテリジェンス協会代表理事 稲村 悠)

台湾で次々と発覚する
中国による選挙介入

 台湾の選挙については、過去においても中国によるさまざまな選挙介入が試みられてきた。

 その内容は、親中派候補への政治献金、中国に進出する台湾企業の懐柔、経済的・軍事的圧力、プロパガンダなど、多岐にわたる。

 そして、今回の総統選においても、直近だけでも下記一覧の通り、実に多くの選挙介入疑義事例が発覚している。

 このような多種多様な選挙介入への対抗策として、台湾では「反浸透法」が2020年1月に施行されている。

 同法は、台湾への浸透・介入を企てる者の指示や委託あるいは資金援助を受けて、政治献金をしたり、選挙活動に携わったりすることを禁じているほか、ロビー活動やディスインフォメーション(意図的に流布される虚偽の情報)を散布し選挙を妨害することも禁じている。

 台湾最高検察署は、反浸透法関連の捜査件数が昨年1年間で85件に上ったと発表しており、中国による選挙介入の激しさと台湾の防諜意識(能力)の高さが見て取れる。