認知戦において懸念される
中央と地方の分断

 選挙介入では、相手の心理や思考(=認知領域)に働きかけ、戦略的に有利な政策決定や世論を作り出す「認知戦」は、極めて身近な問題だ。

 認知戦では、YouTubeやX(旧Twitter)、Facebook、TikTokを活用したディスインフォメーションの流布、インフルエンサーを活用した世論工作が代表例だろう。

 ブルームバーグは昨年7月、「台湾国家安全局の蔡明彦局長は、FacebookやYouTubeなど複数のプラットフォームで1800件余りの偽情報や真偽が問われる情報を確認したことを明らかにした。これは昨年の同じ時期より1400件多いと述べた」と報じており、台湾総統選に向け、激しい認知戦が行われていることを物語っている。

 一方で、認知戦の効果は“一定程度“とする見方が多い。ただし、社会が分断している国では効果的に作用する場合もある。例えば今年大統領選挙が行われるアメリカだ。また、台湾のように政治が分断され、政権選択を迫られるような国でも、一定の効果が見込まれる。

 日本では前述の通り、世論における対中感情が悪く、また、言語の壁もあるため認知戦への抵抗力は高く、親中世論を形成するのは難しい状況にある。

 しかし、認知戦の目的は「相手の分断・不安定化による影響力の行使」であり、そのために、相手国の国内問題を突くのが常とう手段だ。

 日本について具体的に言えば、例えば、時事的な政治的スキャンダルや格差問題、沖縄基地問題、陰謀論、右派ポピュリズムの台頭などが想定される。

 中でも注意すべきは、“中央”と“地方”の分断だ。特に沖縄では、対米感情、本土への感情といった部分で認知戦において、付け込まれやすい土壌がそろっている。