認知戦への対応で求められる
情報の収集と積極的な発信
認知戦への対応では、まず「情報収集」が求められる。
認知領域に対する工作について、「何が行われているのか」や「他国からの教訓」も含め、情報収集を徹底しなければならない。この中には、前述の政治工作・選挙介入に対する情報収集(=工作活動)の暴露のための情報収集も当然含まれる。
さらに、ディスインフォメーションなどに対する正しい情報の積極的な「発信」が求められている。
例えば、原発処理水に関する中国による一連のネガティブ・キャンペーンに対し、日本政府は他国と連携した上で正しい情報を毅然(きぜん)と発信した結果、中国の取り組みは失敗した。
他国と連携したアトリビューション(原因の特定、名指しによるけん制)も極めて重要であり、外交力も求められる。これらを包括して戦略的なコミュニケーションが求められるのだ。
そして、よく言われるのが、国民の“情報リテラシー”の向上だ。
台湾総統選の例で言えば、中国メディアが稚拙な宣伝工作を行っている例も散見される。
多くの人は宣伝であることを見抜けるだろうが、リテラシーの低い人は認知領域の奥深くで影響を受けている可能性もある。
また、マスメディアへの信用や公的機関(=政治)や専門家に対する信頼の低下が偽情報への抵抗力を弱体化させる要因にもなる。
マスメディアへの信用はともかく、公的機関や専門家の言葉にすら耳を貸そうとしない・信じようとしない姿勢を持つ人は、情報をえり好みし、時には偽情報をうのみにし、認知戦の餌食または加担することになるだろう。そして、この傾向はX(旧Twitter)上でも散見される。
認知戦を含む選挙介入や政治工作への対応は、日本のインテリジェンス・コミュニティーだけではなく、国民も含めた日本全体が試される重要なテーマである。