中国政府が米政府に発するメッセージの中に、「サンフランシスコ・ビジョン」という用語が最近頻繁に登場する。昨年11月にジョー・バイデン米大統領と中国の習近平国家主席がカリフォルニア州で行った首脳会談で両国が関係修復に動き出したことを受け、米国にもう「波風を立てるな」と遠回しに警告しているのだ。外交的な働きかけが年明けに一段と活発化し、9日には英語が堪能な共産党の上級特使がニューヨークに姿を現した。13日に実施される台湾総統選を前にした動きとみられる。台湾では8年ぶりに新総統が誕生する予定だが、米中の間では意見の隔たりが埋まらない地政学的な問題が山積している。昨年盛んに言われたキャッチフレーズは「バリ島への回帰」だった。前年にバイデン、習両氏が首脳会談を開いたインドネシアの場所を引き合いに、めったに訪れない米中友好の機会をバイデン政権が無駄にしないようくぎを刺す、同様のえん曲表現だった。