最大震度7を観測した能登半島地震で、立地が集中する日本海側の原子力発電所を巡り緊張が走った。エネルギー業界の著名な有識者、橘川武郎・国際大学学長に、原発への影響を尋ねた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
東日本大震災以後やってきた対策の成果
──能登半島地震後の周辺の原子力発電所について、どのような所感を持ちましたか。
北陸の真下(が震源地)だったので心配しましたが、どちらかというと今回、志賀原子力発電所(石川県、北陸電力)にはフォローの風が吹くと思います。一方、柏崎刈羽原発(新潟県、東京電力ホールディングス〈東電HD〉)にはアゲインストの風が吹くというのがざっくりとした認識です。
──志賀原発についてかみ砕いて説明していただけますか。
確かに変圧器が破損する問題がありましたし、外部電源の5回線のうち2回線が切れました。でも3回線は残ったのです。3.11(2011年3月11日の東日本大震災)以後やってきた対策の成果といえるんじゃないでしょうか。対策していなかったらどうだったのかという比較までにはまだ至っていませんが、少なくともあれだけの地震が起きながら、限定的な問題しか起きませんでした。志賀原発についてフォローは言い過ぎかもしれませんが、特にこれで再稼働にアゲインストの風が吹くことはないと思います。
北陸電の方と話す機会がありましたが、特に大きな問題はないと言っていましたね。北陸電からいろいろレポートも来ていますが、それを見てもそんな感じです。3.11のときの福島第一原発(福島県、東電HD)とはまったく違う状況だと思います。