子どもとの性的行為を妄想しながら自慰にふけったり、実在しない子どもを性的に描いた創作物(マンガ、アニメ、小説など)を楽しむことを取り締まる法律はない。だが、性加害者の治療・更生に携わってきた専門家によれば、憲法19条「思想の自由」や憲法21条「表現の自由」などで守られたそうした娯楽は、小児性愛障害と診断された者の次の性加害の引き金になっているという。※本稿は、『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・編集したものです。
実際に被害者がいるわけではないし
表現の自由は民主国家の根本だが…
あまり知られていませんが、小児性愛障害と診断されたすべての人が加害行為を起こすわけではありません。これは留意すべきポイントです。
具体的には、13歳未満の子どもとの性的な接触を妄想しながらマスターベーションをすること、漫画などの創作物も含む児童ポルノを愛読することなど、児童への性的嗜好は必ずしも直接的な加害行為を含むわけではないということです。加害行為をせずに一生を終える人も一定数います。子どもへ性的な欲求を抱く小児性愛障害者と、実際に加害行為を行う小児性愛障害者は、分けて考えたほうがよいでしょう。
また、小児性愛障害と診断されていない者でも、過度なストレスや夫婦関係、アルコールや薬物などが引き金となって子どもに性加害を行うこともあります。
このように述べると、「実際に被害者がいるわけじゃないのなら、児童ポルノ(子どもを加害する創作物)を楽しむ分にはいいだろう」「児童ポルノがあるおかげで犯罪が減っている」「児童ポルノも表現の自由だ」という声も聞かれます。ときに表現の自由を巡る問題では、SNSなどで議論が過激化し、空転しています。
いまの法律では、子どもを性的な対象として描いていても、漫画やアニメなどの「二次元」の創作物であれば、処罰には当たりません。むしろ市場には氾濫しています。こうした状態こそが、欧米諸国から奇異の目で見られているゆえんでもあります。
この現状を前に、性加害者の治療・更生に携わってきた専門家として明言しておきたいのが、空想や衝動が長期間にわたって繰り返されると、それが習慣化し、行動化へのリスクが高まるという事実があるということです。
子どもへの性加害を繰り返した末、当院で治療を受けている人のほぼ9割以上は、児童ポルノを持っていた、もしくはそれを使った自慰行為を反復的に行っていたというデータもあります。ある小児性愛障害の当事者は、プログラム内で次のように語っていました。