でも、いろいろあってそんな「華やかな暮らし」を泣く泣く削り込まざるを得なくなり、そうしたら自分で自分の面倒などいとも簡単にみることができた。月まで行かずとも、我が幸せの全ては、今のこの小さな家の中に、そして自分の中にあったのだ。窓から見える青い空、白い雲、大きな木、鳥たち、木漏れ日……これ以上何が必要なのだろう。月旅行を夢見てそこに行けない自分を残念に思って生きるヒマがあるならば、キュッキュと窓を拭いてピカピカにすりゃ良かったのだ。
お金も、特別な能力もいらない。ほんのちょっとした決意さえあれば、ただそれだけで十分な幸せを私は私の力でちゃんと手に入れることができる。その事実そのものが、とてつもなく大きな安心と幸福だった。私は無力なんかじゃなかった。私は自分の力で自分の幸せを作り出すことができたのである。
稲垣えみ子 著
そうか。私は自分のことは自分でできるんだ。
それができることそのものが私の幸せなんだ。
人生はちゃんと「手に負える」んだ。
それまで考えたこともない、とてつもなく大きな発見だった。
そうだよこれからもずっと、その幸せを手放さぬように生きていけばいいんじゃないだろうか。つまりは「自分のことを自分で面倒をみきれる範囲」で、ラクに家事をやりきれる範囲で生きていけば良いのではないだろうか。