小学校での必修化や大学受験での出題傾向の刷新によって、英語教育を取り巻く環境は大きく変化し、子育て世代の英語教育熱は年々、高まる一方だ。いまや、日本の大学ではなく海外の大学に直接進学するケースも珍しくない。子どもが学校で後れを取ったり大学受験で失敗したりしないように「家庭で英語をどう教えればいいのか」、「どうすれば英語力が伸びるのか」と悩む保護者も多いだろう。
そこで参考になるのが、元イェール大学助教授で現在は英語塾の代表を務めている斉藤淳氏の著書『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)だ。
本稿では、「親の英語の教え方」が子どもの英語力に決定的な影響を与える理由を解説する。(初出:2021年12月24日)

「親の英語の教え方」が子どもに決定的な影響を与えるワケ【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

「学校英語=役に立たない」という状況に変化の兆し

 日本の学校で教える英語は「実践的な技能が伸びない」「社会に出てから役に立たない」などとこれまでたびたび批判されてきた。実際、仕事や海外旅行でいざ英語を使う場面になっても、思うように話したり聞き取ったりできなかった、という経験をした人もいるのではないだろうか。

 しかし、今後は「実用的な英語力は学校では身につかない」という状況が変わるかもしれない。子どもたちが早い時期から英語に慣れ親しみ、コミュニケーションツールとして実践的に習得できるようにしようと、昨年から新しい学習指導要領のもとで小学校での英語教育が必修化されたためだ。

小学校で英語を必修化するメリットとは?

 これにより、「聞く」「話す」を中心とした「外国語活動」の開始は5年生から3年生に前倒しとなり、年間35コマ導入された。この「外国語活動」は教科として扱われてはいないため、成績評価の対象にはならない。

 一方、5・6年生では英語が正式な教科になったので、成績がつくようになった。内容としては、「聞く」と「話す」だけでなく、「読む」と「書く」学習も加わり、授業時間は3・4年生の2倍で年間70コマとなっている。

 この必修化には、初歩的な英語力を小学生の間にきちんと身につけることで、中学校から始まる本格的な英語学習にスムーズにつなげる狙いがある。また、英語学習に対する子どもたちの苦手意識をなくし、ポジティブな動機づけを促す機会にもなる。

英語の教え方に悩む保護者は多い

 小学校での英語必修化にはメリットがある一方、保護者には不安要素もある。親世代の多くが小学生時代に学校での英語学習を経験していないため、家庭での適切な学習方法がわからず、自分の子どもに英語を教えることに自信を持てないという点だ。

 小学生の段階で「英語嫌い」になってしまうと、中学校以降の英語学習でも苦手意識を持ち続けてしまうケースは少なくない。それだけに、「自分も苦手だったから教えられるか不安」「どうすれば英語好きになってくれるのかわからない」など、英語学習にまつわる親の悩みは尽きない。

英語を教えることに教員も不安を感じている

 さらに、学校で指導する教員の側も、英語を教えることに不安を抱いているケースが少なくない

 英会話教室を運営するイーオンが実施した、現役小学校教員が対象の「小学校の英語教育に関する教員意識調査 2021夏」では、実際に小学校 5-6 年生の英語を「教科」として教えた教員のうち、授業運営が「うまくいっている」「おおむねうまくいっている」と回答した割合が計27%だったのに対し、「あまり自信がない・不安のほうが大きい」「あまりうまくいっていない」と答えた割合は計33%だった。

 小学校3・4年生の「外国語活動」を担当した教員の場合も同様で、「あまり自信がない・不安のほうが大きい」「あまりうまくいっていない」と答えた割合(計24%)が、「うまくいっている」「おおむねうまくいっている」と回答した割合(22%)を上回った。なかでも、スピーキングの指導に苦労しているという。

 2019年度に実施された文部科学省の調査によると、現役の公立小学校教員のうち、英語の教員免許状を所有する割合はおよそ6%だった。教員の英語力向上も今後の課題と言えよう。

大学入試でも求められる英語力に変化

 また、英語教育のありかたが変化しているのは小学校だけではない。これまで実施されてきた従来の大学入試センター試験に代わって今年からスタートした大学入学共通テストでも、英語の出題パターンが大きく変化した。

 以前から検討されていた「聞く・話す・読む・書く」の4技能を測る英語民間試験の活用は見送られたが、今年1月に実施された初めての大学入学共通テストでは、実用的な英語やリスニング能力を重視する傾向が目立った。

 具体的には、リスニングの配点がこれまでの2倍の100点となり、逆にリーディングは200点から半減して100点となった。また、発音やアクセントを単独で問う問題はなくなり、デジタル情報の読み取りや複数の資料を基に考える実践的な設問が特徴的だった。

家庭での英語教育の重要性が高まっている

 このように、学校で英語を学び始める年齢が早まり、大学入試で問われる能力も変化するなか、子どもの総合的な英語力を着実に伸ばしていくためには、学校だけでなく家庭での英語教育もきわめて重要になってくる。

 そこで、家庭での英語学習の強い味方になるのが、元イェール大学助教授で現在は英語塾の代表を務めている斉藤淳氏の著書『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社刊)だ。

 この連載では、『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』より一部を抜粋・編集し、英語力がよく伸びる子の特徴や、「英語が大好きな子」を育てるための環境づくりなどについて紹介していく。