特殊詐欺などが
年末に増える理由

 話を聞くと、息子の大学受験で受験料や入学金などが必要となり、年末に実家を訪れ、学費を工面してほしいと父親に泣きついたところ、投資信託に運用したが元本が割れ、塩漬けになっているので助けられないと断られたようだ。

「とにかくお父さまと一緒にご来店ください。投資信託の運用状況などを、しっかりご説明いたします。むしろ、ご子息はじめ家族の方々に同席いただけるなら、ご理解も早いかと思います」

 こう話すと、あれほど大声を上げていた男性だったが、急に態度が変わってきた。

「さっきは怒鳴って悪かった、すまん。せがれには、せがれには大学に行ってもらいたんだよ…」

 高齢者の場合、必ず家族と同席してもらうのが鉄則である。銀行が判断能力の弱ってきている高齢者を丸めこんで、銀行のもうけを優先したセールスを行っていないことを示すことで、家族ともども安心していただくのが狙いだ。

 俗にいう盆暮れ正月は、こういった出来事が多い。家族、親族の集まるところでは、とかく金の話題になりやすいのか。

 家族のケースとは別だが、年末は特殊詐欺をはじめとした金融犯罪が多い。警察から聞いた話では、犯罪グループが年越しに遊ぶ金を欲しがっていることと、やはり年間を通じて金が動く季節だからだそうだ。

口座開設のためにやってきた
中国籍の男と自称司法書士

 一昨年の暮れにも、こんなことがあった。

 中国向け輸出代行を営む中国籍の男性から、個人事業主として口座を開設したいという相談を受けた。男性は日本語が得意ではなく、司法書士を名乗る男性を通訳代わりに随行させ、窓口に現れた。

「そんな資料、なんで必要なんだよ!何法のどこの条文にそんなこと、書いてあるんだ?根拠法、示してみろよ!」

 通訳の自称、司法書士が怒鳴り出す。

 我が行で初めて事業用の口座を作りたいとの要望に対し、これまでの商取引の実績を確認するために、他行の通帳の写しと貿易関係の資料を要求した途端、2人は発狂したように怒りだした。

「あんたら、銀行なんだろ?預金欲しくねーのかよ?黙って作りゃいいじゃねえか。プライバシーの侵害なんだよ!」

「事業用の口座と聞きましたので、事業内容を確認させていただきたいのです。銀行が預金口座を作成する際には、口座の利用目的を確認させていただきます。今回は輸出代行を営まれているというお話を伺いましたので…」