盆暮れに増える
銀行への苦情
年の瀬が近づくと、さまざまな事情を抱えたお客が来店する。やはり12月は、一年中で一番お金が動く月だ。来店客も普段の月の1.5倍、多い日には約2倍の来店がある。来店客が多ければ多いほど、セールスのチャンスは広がる。これは大歓迎だ。ただ、そんなお客ばかりではなく、苦情もまた相対的に多くなるものだ。
盆暮れは苦情が多い…というのは今に始まったわけではない。平日に来店できないお客が、勤務先が休みに入ることで、ここぞと言わんばかりに日頃の恨みつらみをぶつけに来る。
「おい、お前の銀行は訳の分からねえ投資信託を年寄りに売りつけてるのか!」
開口一番、窓口の女性担当に怒鳴り散らす。すぐに担当者の背後に回ると、
「お前、なんだ?責任者か?」
「はい、責任者でございます。お話を伺ってもよろしいですか?」
「責任者なんだな?じゃあ責任を取れ!投資信託で俺のおやじが損した金を返せ!」
「恐れ入りますが、お父さまのお取引についてはお父さまのご同意をいただかないと、たとえ親子といえどもお話はできません」
「なんだとー!ふざけるな!」
烈火のごとく怒りまくる男性を必死でなだめ、ロビーから死角になる応接室に誘導した。お茶を一口飲むと、少しは落ち着いたようだ。