受験勉強をする学生たち写真はイメージです Photo:PIXTA

大学受験の最難関である医学部受験。何年も浪人生活を重ねてしまう人がいる一方で、試験一発で現役のまま受かってしまう人もいます。こうした受験生は、どのような学習戦略を立てているのでしょうか?河合塾で医学部受験クラスを数多く担当し、2000人以上の医学部受験生を指導してきた生田健治氏が、医学部受験で確実に合格をもぎ取るための秘訣を教えます。(医学部受験専門予備校「ポッシブル」主宰 生田健治)

医学部に一発で受かるために、最も力をかけるべき教科とは

「夏を制するものは受験を制す」

 受験を経験した人は、一度は耳にしたことがあるフレーズではないでしょうか。実は、医学部受験においては、このフレーズになぞらえて、「数学を制するものは受験を制す」などと言われることがあります。数学が得意になると、医学部に受かりやすくなるということです。

 これは、「医学部受験で勝つために、最も力をかけるべき科目は数学である」ということでもあります。理由は、次の3つです。

(1)理系の医学部受験生でも、数学を苦手とする人が多い
(2)数学という科目は、学習をしてから結果につながるまでに時間がかかる
(3)医学部の入試では、数学の難易度が高く、得点差がつきやすい

 一つずつ説明しましょう。まず理由の(1)、実は、これは医学部受験生に限った話ではありません。文理問わず受験生の中で、好きな科目・嫌いな科目のトップに数学が上がるほど、苦手科目として数学を挙げる学生は多いのです。私が指導している学生からも、「理科は単元ごとの学習で成績がすぐに上がるが、数学はなかなか成績に結びつかず、苦手意識がある」という話を耳にします。

 次に理由の(2)ですが、これは(1)の原因でもあります。理科や社会と比較すると、数学は複数の分野にまたがっており、分野ごとの学習では、どうしても得点アップに結びつかないため、習得するまでに時間がかかるという特徴があり、結果として努力もすぐに実らない面があります。複数の単元が関わっており、個々の分野が定着したからといって、入試問題が解けるようにはなかなかならないのです。例えば、入試で出題される例として、確率と数列の漸化式を融合させた問題があります。確率の分野だけをマスターしてもダメで、数列の分野も併せて理解していないと問題が解けないのです。さらには、確率+数列を理解すれば良いという、単純な話でもありません。確率と数列を融合させる考え方を身に付ければならないのです。

 医学部入試で出題される全分野・全レベルを完璧にすることは難しく、年度始めの4月から入試が始まる1月までの10カ月間で、優先度を付けて合格レベルまで持っていくことが必要となってきます。数学は学習のやり方次第で、成績が激変してしまう科目であり、だからこそ、教える側の力量が最も問われる科目の一つでもあるといえるでしょう。