国内最難関の東大理III。毎年100人程しか入れない最高峰学部に入学する「日本最高の頭脳たち」は一体どんな人間なのか。理III合格者の生の声を届け、志願者のバイブルとなっている『東大理III 合格の秘訣』(データハウス)の編集者である里中高志氏に「東大理IIIに合格する人の特徴」を教えてもらった。(取材・構成/作家 鳥居りんこ)
出身高校は?親の職業は?
理III合格者の履歴書
――『東大理III 合格の秘訣』通称「理III本」は参考書でも問題集でもない本なのに、理III生やその志望者から熱烈に支持され、ロングセラーになっています。
本シリーズは1986年に始まりましたが、2023年版で実に38冊目になります。毎年、理IIIに合格した直後の生徒さんに合格の喜び、そして、そのひたむきな努力をお聞きしていますが、例年、合格者の3分の1に当たる30名ほどの生の声を掲載しています。以前は兄弟で理III本に登場した人もいましたが、近年では親子で登場する人たちが現れるほど、歴史があるシリーズになっています。
この本が支持される理由は、合格者が後に続く人たちのために、参考になるであろう情報を余すところなく明らかにしている点にあるのだと思います。おススメの参考書や塾、講師の名前、共通テストを含めた各テストの点数、勉強法はもとより、スランプの克服法、受験直前の心得、さらには自分はどのように生きてきたのか、これから先の夢までを熱く語っていることが特徴。いわば、「理III完全攻略本」です。
――昨年度は3名以上の合格者を出した学校すべてが超難関中高一貫校(高校からの入学者あり)。鹿児島ラ・サール以外は、すべて3大都市圏の学校でした。この結果を、どう感じますか?
1位 灘15人/2位 桜蔭11人/3位 筑波大学付属駒場8人/4位 駒場東邦5人/4位 東海5人/6位 聖光学院4人/6位 ラ・サール4人/8位 開成3人/8位 麻布3人。
※人数は2023年4月末時点の判明数、一般・推薦選抜の合計 出所:大学通信
ここ最近はこの傾向は変わっていません。やはり、理IIIに入るためには中高一貫校に在籍しながら、鉄緑会でしっかりと対策してきた人が有利という状況になっています。理IIIは今や「塾歴社会」の縮図とも言えるでしょう。そのため、鉄緑会がない地域の生徒さんたちは相当な焦りを感じているようです。
とはいえ、本書の中には、鉄緑会の力を借りずに合格を勝ち得た地方の県立校などの出身の生徒さんも登場します。地方の生徒さんは、その地域格差をどう克服してきたのかも赤裸々に語ってくれています。
東京や大阪で鉄緑会に通っている生徒さんより、地方の受験生は不利なところはあるかもしれませんが、いまはSNSも発達しているので、鉄緑会の生徒さんと情報交換をしたり、どんな教材を使って勉強しているかを知ることも容易になっています。ある意味、都会と地方の格差は縮まっているとも感じます。
もしかしたら、めったに東大理IIIの合格者が出ないような高校から合格した生徒さんのほうが、ハングリー精神や持久力があり、医者になってからは強い人間力を発揮するのではないかと思うこともあります。個人的には、多様性の観点からも、もっと地方の公立高校から理Ⅲ生が生まれることを期待しているところです。
1983年設立の中高一貫校生対象の大学受験専門塾。開成・桜蔭、筑駒をはじめとする6年一貫の一流校15校を指定し、厳しい入塾テストに合格した者のみを受け入れている。特に優秀ならば、指定校以外の生徒にも門戸を開いている。毎年、東大や医学部などに大量の合格者を出しており、23年度の合格者数は東大606人、京大129人。医学部で見ると東大理IIIは定員100人に対し59人、京大は55人と、国公立だけで620人に及ぶ。例年、理III合格者の過半数を占め、6割を超える年も珍しくない。
――本書での直近3年間の統計を出してみたのですが、両親がともに医師、もしくは父親が医師というご家庭の割合が高いです(2021年/32名中10名・2022年/33名中10名・2023年/29名中4名)。
そうですね。親御さん、または親族が医師もしくは医療関係者というケースは大変多いです。これは、もちろん遺伝も関わっているのでしょうが、それよりも成育環境が影響を与えているように感じます。