時間の使い方は、その人そのものを表す

 18世紀のフランスで司法官として活躍した美食家、ブリア・サヴァランは次のような一節を残しています。

「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間であるかを言いあててみせよう」

 何を食べるかは、その人の個性を表すものです。あるいは、食べたものがその人をつくっているとも言えるでしょう。時間も同じように、どういう使い方をしているかで、その人の人間性がわかり、またその人の価値観や生き方がわかると言えるかもしれません。

 一日のほとんどを仕事に費やしていれば、あなたは仕事人間ということになります。仕事のほとんどが雑務に追われているなら、あなたの仕事は雑務処理です。自分がそれを望んでいようがいまいが、あなたはそういう働き方を「選択」していることになるのです。

 もちろん、自分が望んで、楽しんで仕事に時間という資源を配分しているのなら問題はありません。しかし、本当はもう少し家族との時間がほしかったり、もっと価値を生み出す仕事をしたいと望んでいるなら、思い切って配分を変えないといけません。配分を変えない限り、仕事の成果も自分が望む生き方も自然に実現することはありません。

 しかし逆に言えば、時間の使い方を変えれば、仕事の成果や人生もまた大きく変わるということです。時間がすべてのベースになるのです。

どのように時間を使うかは、
どのように生きたいかと同じ

 40代の時間術で最も重要なことは、自分の資源である時間を、自分にとって最も重要なことに集中投下することです。仕事においても人生においても、大切なことを正確に見抜き、そこに時間をどう振り分けるかを考えないといけません。

 両立世代である40代が後悔しない人生を送るには、どの年代よりも「仕事と家庭」「自分と部下」「成果と雑務」「忙しさと健康」「自己実現と出世」などのバランスを上手に取りながら、戦略的に時間を配分していくことが求められます。

 しかし、総量が決まっている時間を配分することは、決して簡単ではありません。必ず判断に迷うはずです。なぜなら、やりたいこと、やるべきことの量は、最初から持ち時間をオーバーしているからです。

 そのためには、何が仕事の成果に直結するのか、何が自分の人生を幸せにするのかを知り、そこに焦点を合わせなければいけません。それは、これまでの仕事のやり方を大きく見直すことであり、どうすれば結果を出せるのかという仕事のプロセスを深く考え、自分のメソッドを更新していくことです。

 また、メソッドのバージョンアップだけでは不十分で、実践し続けていくための日々のマネジメントも必要です。自分を方向づけ、コントロールしていくための習慣づけがなければ、すぐに元に戻ってしまうでしょう。

 時間は人生そのものなので、結局小手先のテクニックだけでは意味がないのです。仕事も家庭もトータルに考えて、何が本質なのかを見抜き、そこに実行するための時間を配分することです。

 限られた時間で行うには、重要なことを優先し、不要なことを捨てる勇気も必要です。仕事で成果をあげたいなら、時にプライベートは犠牲になることもあります。限られた時間を配分するのですからトレードオフは仕方ありません。それは良い悪いではなく、「意思」の問題です。

 時間の使い方とは結局のところ、自分の価値観を見直し、どういう生き方をしたいかの「意思表示」でもあるのです。時間術とはライフハックではなく「意思」なのです。自分がどういう人間で、何を大切にしているのか、この先、どういう人生を送りたいのかという自分なりの意思と密接に関わってきます。

 時間を色分けしたときに、自分がどう生きたいかという願望と、実際の時間割を一致させることです。それが一致していないことが最大の後悔要因なのです。だからこそ、膨大なやるべきことを抱える40代は、自分の働き方や生き方に合わせて時間配分を大きく変えないといけないのです。それ抜きの解決策はありません。