40代の仕事量はそれまでのスキルでは対応できない

 40代を一言で表現すれば、それは「両立世代」だといえます。「仕事と家庭」の両立から、「自分の仕事と部下のマネジメント」の両立、「自己実現と出世」の両立、さらには「夫と父」「妻と母」の両立まで、一日中、天秤のバランスを取りながら過ごすことが求められるシビアな年代です。

 しかも、仕事量は30代とは比較にならないくらい膨大に増え続けます。自分の仕事に加えて、部下のフォロー、上司への資料作成、関連部門とのすり合わせ等、上と下に挟まれる中間管理職ならではの仕事を両手いっぱいに抱えることになります。

 事実上、300%の不可能領域といっても決して大げさではないでしょう。仕事量だけ見れば、すでにオーバーフローしている状態で、すべての仕事をやるには時間がいくらあっても足りないはずです。

 さらに、40歳の峠を越えると実感するのは、気力・体力の衰えです。30代までは何事もなかったことや、無理をすればできたことが、40代になると否が応でも厳しく感じるようになるのです。

 それまでコツコツと培ってきたスキルや、体力に任せて「エイヤ!」と力業でねじ伏せてきたやり方ではとても対応できないほどの、圧倒的な仕事量です。どれだけスキルに磨きをかけても、これまでの延長線上では、その物理的な「量」という壁の前で、多くの人が遅かれ早かれ無力感を味わうことになります。

人生の分かれ道となる「40代の壁」とは?

 実は、40代というのは、これまで自分が築き上げてきたメソッドや、その上で絶妙に積み上げてきた、さまざまな両立のバランスが崩れ始める時期です。

 30代までに成果を出してきた人というのは、人以上に努力をしてきた自負があるはずです。言い換えれば、人の何倍もの時間を費やして結果を生み出してきたのです。本人が意識しているかいないかは関係なく、輝かしい成果は必ずそれまでかけた多くの時間の対価で支えられています。いわば、「時間を使って解決してきた」といえるのです。

 しかし、時間で解決した問題は、時間がなくなると解決できなくなります。頑張りが足りないわけでも、能力が落ちたわけでもありません。これまでと同じように「時間が取れない」だけで、築き上げてきたスキルは無用の長物へと成り下がってしまうのです。

 40代で多くの人が陥るのが、頭ではできるイメージがあっても、物理的に時間を奪われるために実行が伴わなくなるということです。どれだけ正しい方策を考えても、実行できる基盤がなければ意味がありません。実行するための基盤、実行のOSこそが時間です。

 やりたいけど、やる時間がない、これまでと同じように仕事に時間をかけられない、そうしたジレンマを抱える40代は、時間というOSの刷新をしないと立ち行かない年代なのです。これが「40代の壁」の正体です。

 どれだけ効率化を洗練させても、膨大な仕事量には焼け石に水です。時間の使い方を根本的に変えない限り、どれだけ上手にやれるイメージを持っていても、そもそも実行することができないのです。30代まで優秀だったプレーヤーが、マネジャーになったとたんにうまくいかなくなる大きな理由はここにあります。ドラッカーは『経営者の条件』で、次のように言っています。

「成果を上げる者は、仕事からスタートしない。時間からスタートする」

 すべての土台は時間なのです。自分で自分の時間をマネジメントできない限り、何もかも絵に描いた餅になってしまうからです。40代が最も後悔する時間の使い方こそ、この年代が真っ先に身につけるべきスキルだと言っても過言ではありません。

 この連載では、先人たちの後悔を集めて他山の石とし、逆にうまくいった人たちが工夫しながら身につけた等身大の時間術を、リスト形式にまとめて紹介していきます。