しかし、人の命は老少不定。いつ、どんな病気になるか、いつまで生きられるかはわかりません。人生百年時代を迎えた日本でも「百年、夢幻の如し。稲妻の閃きに異ならんや」と先人たちが言ってきたように、人生に残された時間は悠久ではありません。ですから、無為(為すこと無し)に時間を過ごすのはもったいないと思います。

 私は体力の衰えを感じるようになってから、我武者羅に動きまわるのをやめたので、いくらか暇な時間が増えました。そこで気づいたのは、暇な時間は何にでも使えるということでした。体を休めてもいいし、心を豊かにするために娯楽に使ってもいいでしょう。いざという時に役立つ準備として見聞を広め、勉強しておくこともできます。何もしないことにどれくらい耐えられるかに挑戦してもいいでしょう。

 私の座右の銘の一つに「暇な時間は、忙しい時よりずっと多くのことが得られる」があります。忙しい時間ばかりすごしていれば、やったことを心の中で整理する時間がありません。整理するから、寄り道や回り道も無駄ではないとわかり、陰で自分を支えてくれた人の恩にも気づけるのです。暇な時間をあなどらないほうがいいですよ。