「再現できないもの」を、科学と主張できるのか?
再現性が最も重要な問題だった。
科学の発見が真剣に扱われるためには、偶然の産物であってはならず、装置に不具合があってはならず、科学者が不正や偽装をおこなうことは許されない。実際に起きたことでなければならないのだ。
そして、実際に起きたことなら、原理的には、私も概ね同じ結果を得られるはずだ。多くの意味でそれが科学の本質であり、世の中について知るためのほかの方法とは異なる点でもある。言い換えれば、再現できないものは、科学的におこなったとは主張できない。
「すべてが修辞的技巧だった」
悪名高い研究から数年後のインタビューでベム自身が語ったことは、再現性に対する多くの科学者の考え方を簡潔に述べている。
「厳密さが大切であることは全面的に支持するが、私にはそれだけの忍耐力がない……私の過去の実験を見ればわかるとおり、すべてが修辞的技巧だった。自分の主張の裏づけになるようなデータを集めた。説得するためのデータであり、『これは再現できるか、できないか』などと案じたことはなかった」
(本稿は、『Science Fictions あなたが知らない科学の真実』の一部を抜粋・編集したものです)