「安全」にも
お金がかかる時代がやってくる

 これからの日本ではさらに次々と「タダ同然だ」と思っていたものが高いお値段で有料化されていくはずです。そしてその中でも一番怖いものが二つあります。それが冒頭でお話しした「安全」と「水」です。

「安全」に関しては、犯罪件数は目に見えて減少しているにもかかわらず、国民の体感治安は年々悪化しています。

 フィリピンから「ルフィ」の指示をうけた強盗団が富裕層の住宅を襲ったり、外国人グループ同士の抗争で暴動が起きたりと、一般市民が重犯罪に巻き込まれるリスクは年々増えているように感じるのです。

 加えて、振り込め詐欺やフィッシングメール、押し買いなど、高齢者から見れば自衛しにくい形での金融犯罪リスクも増加しています。

 警察という無料の安全サービスは、それらのリスクに対する防護壁になってくれている一方で、事件にならないと動いてはくれないという方針が、時代のニーズから乖離(かいり)し始めていることも事実です。

 警察官は全国で約26万人と、公務員のなかでも飛びぬけて人数が多い組織ですが、市民の視点で言えば今の日本の生活を守るためには、40万人ぐらいに増強してくれたほうがいいように思います。真剣にそう思うのですが、政治家はなかなか動いてはくれません。理由は予算がないからですが、その「安全」の予算はちょっとおかしなことになっています。

「安全」の有料化として今、日本で一番お金がかかっているのが防衛費の増額です。今後5年間で総額43兆円の予算を計画しています。

 周辺国とのリスクが増大しているのだから防衛費の増額は当然だろうという意見は、理解はできますが、43兆円となると国民1人当たりの負担額は35万円です。有料化も過ぎるレベルの話なのではないでしょうか。

 私は思想としては自衛権を重視しています。でも日本が防衛費を増額すると表明した結果、何が起きたかを見ると、この政策に違和感を覚えるのです。

 要するに日本にあわせる形で中国がその後、防衛費を増額したのです。中国も経済情勢は厳しいわけですから、軍拡の前に軍縮の交渉をきちんとやった方がよかったのではないでしょうか? 購入するミサイルの数を減らして、警察官の数を増やしたほうがよかったのかもと、そんな疑問が渦巻くのです。