アメリカの水の値段は日本の約2.5倍
いずれは値上がりするだろう

 そして、最後が「水」です。

 日本の水の値段は本当に安くて、生活はとても助かっているのですが、これがいつまで続くのかはわかりません。なにしろ日本全国で上下水道のインフラは老朽化していて、メンテナンスのめども十分にはたっていないのです。

 私は投資を勉強する目的で、自分の会社でアメリカのクリーブランドでの賃貸住宅経営に手を広げたことがあります。やってみてわかったのが、日本のようにはなかなかもうからないということでした。理由は、現地では上下水道代は家主が負担する慣習があるのですが、これがめちゃくちゃ高額なのです。

 あくまでかつて私が所有していた10ほどの物件の平均的な数字ですが、600ドルほどの家賃で貸している物件で上下水道代が月額で100ドル(約1万5000円)ぐらい差し引かれます。日本だと4人家族の水道代の平均は月6300円ほどですから、2.5倍ぐらい高いイメージです。

 海外では高い水道代をなんとかしようと、水道の民営化に手を出して失敗した事例がたくさんあります。「民営化の方が安い」というプロパガンダを真に受けて民間会社に委託したところ、水質が悪化したうえに水道料金が大幅に値上げされたなどという事例が続出したのです。

 結局のところ、それらの国では民間水道会社から政治家へカネが流れた結果、国民がつらい思いをしたというのが実情だったようです。水道インフラは、やはり自治体が価格以上のコストをかけて整備しなければ維持できないものなのだと後になってからわかったわけです。

 そういったことを総合的に考えれば、日本のタダ同然の水道代も、いずれは値上がりしてタダ同然ではなくなる日がやってくることを、覚悟する必要があると私は予測しています。

 突き詰めて考えると、「水」も「安全」も「救急医療」も「送料」も「ごみ処理」も、どれもこれも「タダ同然」という時代ではもうなくなってきているということです。

 とはいえ、少子高齢化でこの国のインフラを維持していくためには、有料化一本に頼るのではなく、限られた予算を賢く使ってくれる政治家に出てきてほしいところです。