みなさんは、世の中のちょっとした変化に敏感でしょうか。
数字に強い人は、ちょっとした変化に「違和感」を感じ、自分で仮説をたてて、その理由を数字で考えていきます。
経営コンサルタントとしてこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施してきた平野薫氏は、①世の中の事象に違和感を持つ→②違和感にフォーカスする→③自分なりに仮説を立てる→④数字で根拠を分析し検証する→⑤人に話したりブログに書いてアウトプットする、という一連のルーティンを日々継続して行うことが数字に強くなるコツだと言います。まずは、「違和感」を放置せずフォーカスすることが大切なのです。
本連載では、「世の中のふとした疑問を数字で考えるエピソード」が満載の話題の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』から一部抜粋し、数字に強くなるエッセンスをお届けします。

なぜふるさと納税の返礼品は1万円の商品を選ぶべきなのか?Photo: Adobe Stock

ふるさと納税の寄付額は全国で約1兆円

 皆さん、ふるさと納税はされていますでしょうか? 制度について賛否両論ありますが、実質2000円の負担で全国の特産品をもらえるというお得な制度で、利用者が年々増加しています。

 ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度実施)によると、令和4年度(2022年度)の寄付額は前年度比1・2倍の総額9654億円と右肩上がりに増えており、利用している人も前年度比1・2倍の891万人に達しています。一部の年金受給者でも利用している方はいると思いますが、日本の労働力人口が6860万人(2021年)ということを考えると労働者の8人に1人くらいは利用していると考えられます。かつては「ふるさと納税って何?」と言われていましたが、最近では「まだやっていないの?」という雰囲気になってきた気がします。

なぜふるさと納税の返礼品は1万円の商品を選ぶべきなのか?

 市町村の財政に与える影響も大きくなってきており、北海道紋別市や宮崎県都城市は200億円近い寄付額を集めていますし、北海道白糠町のように税収10億円弱に対して、ふるさと納税の寄付額で約150億円を集めている自治体もあります。

なぜふるさと納税の返礼品は1万円の商品を選ぶべきなのか?

ふるさと納税は1万円程度の返礼品がお得

 ふるさと納税の返礼品に何を選ぶのかを年末の楽しみにしている方もいるかと思います。所得が多く、寄付可能額が大きい方の場合、探すのも手続きも面倒なので一括で高額な返礼品を選ぶ方もいるかと思います。しかしお得に枠を使いたいということであれば、面倒でも寄付額1万円程度のものを複数選ぶべきです。なぜなら寄付額1万円程度の返礼品は非常にお得な商品が揃っているからです。

 ふるさと納税では総務省は過度な競争を抑えるため、2019年6月に「返礼品の調達額は3割以下にすること、またその他の費用をあわせたふるさと納税の経費総額費用を5割以下にすること」がルールとして厳格化されました(2023年10月以降はポータルサイトの手数料や寄付金受領証の発行にかかる費用など、これまでに含めていなかった経費も含めて5割以下)。

 そのため返礼品のお得度にはそれほど大きな差は無いと考える方も多いと思います。しかし、ここで重要なのは調達コストです。総務省から指示されているルールは返礼品の一般的な販売価格ではなく調達額が寄付額の3割以下となっています。つまり、安く仕入れることができるほど同じ寄付額でお得な返礼品を送付することができるようになります。寄付額1万円程度の返礼品は利用する人数が圧倒的に多いため数量が多く出る価格帯です。そうすると一括で低コストの仕入をすることができ、その分お得な商品が多くなります。また1万円程度の返礼品はボリュームゾーンであるため、自治体ごとの競争が一番激しい価格帯であることもお得な返礼品が多い要因の一つです。

 実際、本当に寄付額1万円程度の返礼品がお得なのか? ふるさと納税を取り扱うサイトでは、返礼品の還元率というものを表示しているサイトもあります。還元率とは何かというと、寄付金額に対する返礼品の市場価格の割合です。寄付額が1万円で返礼品の市場価格が5000円であれば50%と算出されます。このランキングを見ると、やはり上位にランクしているのは寄付額1万円程度の返礼品ばかりです。還元率で見ると100%を超えるものも珍しくありません。つまり1万円の寄付で1万円以上の返礼品が貰えてしまうということです。もはや寄付という名のネット通販ですね。

 近年は前述したようにふるさと納税の市場規模が急激に大きくなってきています。それに合わせて自治体の調達力も増え、調達コストも低くなってきています。特にふるさと納税で大きな寄付を受けている自治体ではその傾向が顕著になると思われます。ふるさと納税については都市部を中心に税収の流出も大きな問題になってきていますが、還元率の競争は更に激化すると思われます。

(本原稿は、平野薫著なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?を抜粋、編集したものです)