「相手に委ねる」というのは勇気を要するし、とても重要なプロデュースの流儀
四角 そう、自然界の方がよっぽど厳しい(笑)。最新刊『超ミニマル・ライフ』は、「脳疲労とストレス対策」「食事・運動・睡眠の最新メソッド」、そして「人間関係・働き方・お金」と――自然界ではなく、現代社会を生き抜くための【ライフスキル】を全網羅しています。さらに前著『超ミニマル主義』は、デバイスやビジネスツールなどの「物質」、デスクやワークスペースといった「空間」、情報・データ・スケジュール・タスクという「非物質」まで網羅する、【ワークスキル】大全とも言えます。現代社会で「真の幸せ」を手にするためには、片方だけではなく【ワークスキル×ライフスキル】の両方が必須だと考えています。
生きていく上で「何が一番大事」なのかが分かっていれば、それ以外の物事を手放すことは怖くない。自分の中での「ミニマル」を知っていれば、「これがなくても死ぬことはない」って思えるようになりますから。すると、自分にとっての「不要や余計」が明確に見えて、「身の丈」がわかるようになり、【本当に大切な物事】に集中できるようになる。
川原 そこはもしかすると、僕が自著『Be Yourself』で伝えていたメッセージに近いかもしれませんね。ただ僕はプロデューサーとしてはもっと大雑把なんですよね。四角さんのプロデュースは「微に入り細に入る」。細かい不要物まで削ぎ落としていくのが四角さんのスタイルで、僕の場合は場を作って、「はい、どうぞ」と相手に委ねてしまう。僕の方がやっぱり雑なんですよね(笑)。
四角 その方法は決して雑とは思わない。「相手に委ねる」というのは勇気を要するし、とても重要なプロデュースの流儀です。卓巳さんは、人をありのままの姿で輝かせるべく自然に導くことができる。でも実はそれが一番難しい。
人をプロデュースする仕事に必須なのは、その人に眠る彫刻作品、つまり【本当の姿=本質】を見抜く能力。必要以上の物事、余計なプライド、過度な野心といったノイズに振り回されている人を見ると、「それいる?」って伝えたくなる。そういう余計なものを削ぎ落とさない限り、その人本来の姿は表に現れてこないから。
川原 なるほど。人のプロデュースをしていて、それはよくわかります。
四角 そして、僕たちプロデューサーは「魔法の杖」を持っているわけではないから、アーティストを、本来の姿とは違う形に変えることはできない。「答え」はプロデューサーが持っているのではなく、その人自身の中にしかない。プロデューサーは、あなたの中に眠る【本来のあなたという彫刻作品=答え】を見つけ出し、それを削り出していくお手伝いをするだけ。自分一人では削り出すことは難しく、限界があります。
僕はこれまでに何度も、プロデュース術の本を出してほしいと言われてきました。でも、業界の人や音楽アーティストといった一部の人の役にしか立たない本は、書きたなかった。でも、川原さんが『Be Yourself』という、世界一わかりやすいセルフプロデュースの本を出してくれた。
川原 そう言ってもらえると頑張って書いた甲斐がありますね。
【自分という彫刻作品】を削り出す方法
四角 そして実は、『超ミニマル』シリーズの2冊は、レコード会社時代に確立した、「アーティストという彫刻作品」をありのまま削り出す【削ぎ落とすプロデュース術】を、誰もが実践できるよう体系化した本でもあるんです。『超ミニマル主義』のSTEP1からSTEP7まで読み、次に『超ミニマル・ライフ』のSTEP1からSTEP7まで順に読み通せば、自動的に【自分という彫刻作品】を削り出せるようになっています。
日本には、同調圧力や他者基準に押し殺されて、「自分を見失っている人」「自分の人生を生きていない人」が多すぎる。だからぜひ、この2冊と、こんまりさんと川原さんの本を読んで、本来の自分を取り戻し、真の幸せを見つけ出してほしいんです。そして、より多くの人が自分自身と人生を愛せるようになれば、日本は間違いなくいい方向にシフトする。 『超ミニマル』シリーズの2冊には、そんな願いも込められているんです。
(了)
片づけコンサルタント
幼少期より片づけに興味を持ち、大学在学中に片づけコンサルティング業務をスタート。2010年に出版した『人生がときめく片づけの魔法』は世界40カ国以上で翻訳され、1,400万部突破のベストセラーに。2015年に米『TIME』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出。Netflixに冠番組を持ち、2019年にエミー賞2部門にノミネート、2022年にはデイタイムエミー賞を受賞するなど、世界規模での片づけブームを巻き起こしている。現在は夫ととも3人の子供を育てつつ、「片づけ×ときめく生活」をテーマに発信をしている。最新刊『こんまり流 今よりもっと人生がときめく77のヒント』が好評発売中。
KonMari/Takumi Inc. CEO プロデューサー
1984年広島県生口島生まれ。大学卒業後、人材系コンサルティング会社に入社し個人・企業向けのビジネス構築、人材戦略を行う。近藤麻理恵とは学生時代からの友人であり、2013年からは公私ともにパートナーとして彼女のマネジメントと世界展開をプロデュース。2016年にアメリカ移住後、シリコンバレーとハリウッドに拠点を置きながらKonMariのブランド構築とマーケティングを手がけるほか、日本発コンテンツの海外展開もプロデュースしている。近藤の著書『人生がときめく片づけの魔法』シリーズをマネジメントし世界40ヵ国累計1400万部の世界的ベストセラーに。2021年、Netflixにて『Sparking joy with Marie Kondo』のエグゼクティブプロデューサーとして参画し、2022年テレビ界のアカデミー賞と称されるデイタイム・エミー賞を受賞。著書『Be Yourself -自分らしく輝いて人生が変わる教科書-(ダイヤモンド社)』。ハイブリッドサロン『SMALL WORLD』を主宰。川原卓巳プロデュースの学校を創設。