「たった1人に届けるピンポイント理論」と「一点突破ヒットの法則」

川原 判断軸ではなくて「判断基準」に対する感性の尖らせ方は二人とも共通していて、クレイジーなくらいですが(笑)。

 僕自身は、『超ミニマル』シリーズ2冊を通して四角さんの極め切った、超オタク的な要素を感じることができました。本の中にモノや服の重さなどがグラム数で書かれていたのが印象的でした。特に『超ミニマル主義』STEP7の「思考と習慣の軽量化」については、人をプロデュースする上でも大切な部分です。ここはまるで、プロデューサーをしている僕に向けて書いてくれたのかと思うくらいでした。

【川原卓巳×こんまり×四角大輔】人生がときめくだけじゃない――「お片づけ」が仕事にもたらす最大効果とは四角大輔さん(右)と川原卓巳さん(左)

四角 読者それぞれの人生に落とし込めるように書いてはいますが、僕自身、もともとは音楽業界でアーティストをプロデュースする仕事をしていたので、同じように「人」をプロデュースしている川原さんには、真意や深い部分が理解してもらえたんだなと。だから、そう思ってもらえたのは最高の喜びです。

川原 本書のSTEP7のMethod7~9に「たった1人に届けるピンポイント理論」と「一点突破ヒットの法則」が書かれているけれど、これは本当にそうだと思っています。

 こんまりは、今では世界で「Kondo=片づける」という動詞になっているんです。それくらいグローバルな動きになっているけれど、元をたどれば、それぞれの現場で、誰か一人の心を大きく動かしたことで、道が開けてきたんです。それが、ハリウッドの女性だったり、イタリアでDJをしている方だったり、ニューヨークタイムズの記者だったり……。各地のキーパーソンとなる人を起点に世界に広がっていったんです。

四角 たった一人の感動という小さな波が、波状のように大きく広がり、世界へ伝わっていく――。それがヒットの大原則です。それなのに多くの人は一人を感動させる前に、広く社会に訴えようとするから、結果として誰にも響かないものが出来上がってしまう。

 どんなヒット作も、「すべてはこの人から始まった」という一人のキーパーソンや、一番最初にて買ってくれたユーザーがいます。真のヒットを狙いたいなら、このシンプルな絶対ルールを忘れてはいけないんです。

自然の中を生き抜くサバイバルスキルより、ビジネススキル習得の方が簡単

川原 ところで、僕にとって四角大輔は「もし地球に何かあったとしても、最後まで生き残る人」なんです。四角さんは自分が生きていくために、最低限、何が必要かを分かっていて、生き延びるために必要な技術も身につけている。四角さんは「SDGsの実践者」としてよく取り上げられるけれど、「地球と共に生きる力」が高いのだと思います。その上で、「ミニマルが最強だ」と教えてくれている。

四角 「これさえあれば生きていける」という生存のための、最小単位(ミニマル)を知っているから、「これがなくても生きていける」って、余計なものが分かっちゃう。

川原 僕たち人類が生き残るために最低限必要なのは、きれいな空気と水です。だから、四角さんはニュージーランドの湧き水でできた湖のほとりに暮らし、そこの自宅には畑や果樹園もあって、お手製の毛バリで魚を釣ることもできる。お金がないと生きていけない資本主義社会に縛られず、地球で「生きる力」を極めている。

四角 【生きる能力=ライフスキル】ですね。幼少期からずっと野外遊びに明け暮れ、大学生で登山やキャンプ、魚釣りといったサバイバル術を極めていた。さらにアルバイトでは、引っ越しや工事現場、農家の手伝いといった肉体労働ではほめられるけど、事務や接客といった頭脳労働ではいつも「お前は全然使えない」って言われてた。

 だから僕は当時、「自給自足ならできそうだけど、社会に出て組織や上司に評価されたり、昇進するなんて絶対に無理」と思っていたんです。でもその後、15年のレコード会社勤めで大きな成果を残すことができ、フリーランスになってからもいい仕事をやり続けられている。それは、この「生きる能力=ライフスキル」があったから。「自然の中を生き抜くサバイバルスキルより、ビジネススキル習得の方が簡単」ということが、今となってはわかります。

川原 「自然界よりビジネス界の方が容易」だと(笑)。