唐突で理不尽な異動の命令は、会社員の宿命だが、簡単に受け入れていいものだろうか。自分のキャリアをどう構築するか、この会社に居続けるべきか。逆境の今こそ、自分の10年後、20年後を考える絶好の機会なのだ。※本稿は、安達裕哉『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(日本実業出版社)の一部を抜粋・編集したものです。
畑違いの部署への異動命令を
簡単に受け入れていいのか
「会社に不満があるなら、まず自分を変えなさい」。これはよく言われる話である。たしかに正しいときも多い。しかし、常に正しいわけではなさそうである。
たとえば、こういうシーンを想像してみよう。技術者として新卒で入った会社に7年在籍し、技術ひと筋でやってきたところ、営業への転向を言い渡され、営業部に異動することになった。
営業の仕事は、技術者にとって未知の世界であり、スキルを身につけるには時間がかかる。ただ、長期的に見れば顧客の視点で自分たちのサービスを見るのは決して悪い選択ではない。このとき、大きく3つの選択を考えるだろう。
1.会社に従って営業を頑張るべきなのか?
2.不満を隠さず転職を考えるべきなのか?
3.会社にとどまって、時期を待つべきであろうか?
ここでまず、認識が必要なのは、どんな仕事であっても、一流になるにはとても時間がかかるということだ。したがって、あなたがいま20代の技術者だとして、これから営業としてキャリアをあらためるならば、営業の仕事を極められるのは30代後半である。そのころには「転職をしたい」と思っても、20代のいまより選択肢は少ないだろう。
そう考えると、1を選択し、軽はずみに「営業をやります」とは言えないはずである。余計なことをしている暇はない。人生の貴重な時間を、浪費するわけにはいかないのだ。つまらない仕事、不本意な仕事は誰も避けて通れない。
しかし、ただ従うのではなく、「営業でテレアポを1年やるのはいいが、5年やるものではない」と思うなら、1年経ったらすぐ辞めていい。一流になるにはとても時間がかかるので、自分の仕事を慎重に選ばなければならないのだ。
故スティーブ・ジョブズは言った。「もし今日が人生最後の日だとして、今日やろうとしていることは、ほんとうに私がやりたいことだろうか?それにノーと言う日が続くと、そろそろ何かを変える必要がある」。
何が役に立つかは現時点ではわからない。営業が役に立つかもしれない。役に立たないかもしれない。だから、ほんとうに自分を信じれば、迷うことはない。自分がしたい仕事、一生懸命真剣にできる仕事だけをすればいいのだ。
何ごとも、楽しくやれなければ長続きしないし、一流になるために自分を変えるのは並大抵の努力ではできない。血のにじむような努力が必要だ。