アレルギー、宗教…学校給食は制約がいっぱい!献立づくりに苦闘する栄養士たち写真はイメージです Photo:PIXTA

食物アレルギーを持つ児童生徒は年々増加し、宗教上の理由で食べられないものがある外国人の児童生徒への対応にも、栄養士は頭を悩ませている。また、特別支援学校では嚥下しやすいなどの対応食が必要だという。1人でも多くの生徒に給食を提供しようと奮闘する栄養士の取り組みに迫る。※本稿は、松丸奨『給食の謎 日本人の食生活の礎を探る』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

食物アレルギー児童の急増に
各自治体の対応はさまざま

 卵、乳製品、魚類、肉類、甲殻類、小麦、ソバ、ナッツ類、大豆、果物など、食物アレルギーを引き起こす原因食物はさまざまです。こうした食物に対してアレルギーを持つ子どもたちは年々増加しています。

 令和4(2022)年に全国の公立小学校・中学校・高等学校・中等教育学校等の児童生徒約830万人を対象とした日本学校保健会の調査によれば、食物アレルギーを持つ児童生徒は約53万人(6.3%)でした。平成25(2013)年の調査では約41万人(4.5%)だったことから、増加傾向にあることがわかります。

 私自身の実感としても、学校の栄養士になりたての今から15年ぐらい前は、食物アレルギーを持つ児童はいませんでした。しかし毎年1人、2人と増えていって、現在の勤務校では全校生徒約600人中、30人くらいが食物アレルギーを持っている状況です。

 アレルギーによってアナフィラキシーショックが起きた時に、緊急の処置として行なうエピペンという自己注射があります。注射のタイミングが生死を分けるケースもままあります。

 文部科学省の調査によれば、平成20(2008)年からの5年間で、学校では408件の使用がありました。私たち栄養士は毎回の給食について絶対に気を抜けません。

 対応は「除去食を作る」「代替食を作る」「対応しない」などのなかから、自治体が方針を決定しています。

 もっとも多い対応は「除去食を作る」です。通常の献立から原因物質だけを除去する方法で、代わりになにか作ってあげたりはしない、ただ除去だけをするやり方です。

 栄養士は完成した献立表をもとに、調理員向けのアレルギー対応表と、保護者向けのアレルギー対応表を作成します。調理員向けの対応表では、アレルギーの原因となる食材の除去方法などを記載します。

 保護者向けの対応表では、予定している対応策をできるだけ具体的に伝えるようにしています。

「○月○日のかきたま汁の仕上げに卵を流し入れますので、卵の除去食を作ります」「○月○日の卵焼きは、卵がメインの主菜で除去ができませんので、代わりの弁当を持参してください」など、理由を添えて、正確に作成していきます。同じものを担任の先生と校長にも渡しておきます。