私の勤務する文京区では現在、宗教にまつわる給食対応は「しない」ことになっています。宗教上の理由で食べられない食材がある場合は、ご家庭からお弁当を持参してもらっているのです。

 この方針が定まるまでは各校の栄養士の判断に任されていたので、かなり大変でした。

 どの宗教ではどんな食材が禁忌となっているのかを自分で調べなくてはならず、「豚がダメなのか、ではチャーハンの具は焼豚ではなく鶏肉にしよう」「あっ、スープのだしに豚が入っていた……」と、ただでさえ制約だらけの献立作りの難易度がさらに上がります。

 宗教で禁止されている食材は、食べても命の危険があるわけではないという点で、食物アレルギーへの対応とは根本的に異なります。しかし、本人にとっては「精神的な死」ともいえる苦痛を感じることがあるのです。

 宗教ごとにそれぞれ異なる禁忌があるわけで、そのすべてに栄養士が責任を持って対応するのは、正直、荷が重すぎます。

 今では私の勤務地では宗教にまつわる給食対応をしないことになったものの、せめてできることは、という思いで、私は献立表に「この献立に豚肉が使われています」というメモを書いて、該当の児童に渡してあげることを続けています。

 特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者(病弱含む)である児童が通う学校です。

 給食については、「特別支援学校の幼稚部及び高等部における学校給食に関する法律」(昭和32年法律第118号)で定められています。学校給食法に準じているので、制度や栄養価などは基本的に同じです。

 特別支援学校の栄養士になるには、通常校の栄養士と同じ資格で大丈夫です。「飲み込みにくい」といった嚥下困難の障害のある子どもも多く、通常校の給食以上に配慮が必要です。児童ひとりひとりに合わせて、軟菜食やペースト食を用意します。