親善イベントには、香港政府が深く関わっていた
今回の親善イベントには、香港政府下の大型イベント誘致プログラム「“M”マーク」計画から1600万香港ドル(約3億円)の賛助金が支払われることになっていた。観客席にも、李家超・香港行政長官、陳茂波・財政長官、楊潤雄・文化体育旅行局長など政府の高官がズラリと姿を見せ、陳財政長官らは試合前にその興奮ぶりをSNSに流していたという。
だが、メッシ欠場で観客から不満が上がり始めると、高官たちは慌ててその書き込みを削除。試合終了後の夜11時には政府は声明を発表し、「欠場が明らかになった時点で政府は人を介してメッシ選手に自らコートに立って観客に説明するよう求めたが、実現しなかった。主催者およびインテル・マイアミは観客、特にわざわざ遠くからこのために駆けつけた旅行客の失望に応えようとしなかった」と非難、「賛助金を減額する可能性もある」ことを強調した。
イベントの主催者としてインテル・マイアミを招聘(しょうへい)したのは「タトラー」という世界的に高級消費品の宣伝媒体を展開している企業の香港支社「タトラー・アジア」で、スポーツイベントを主催するのはこれが初めてだったという。それなのにこのイベントが実現したのは、タトラー側が「もともとベッカムと付き合いがあり、イベント代理権を獲得した」ためだった。
香港政府の楊潤雄・文化体育旅行局長は試合翌日、会見を開き、政府がタトラー・アジアと結んだ賛助支援契約書には、「安全や健康面での理由を除いて、メッシ選手が少なくとも45分間出場すること」という条文があったと述べて、賛助金の減額には根拠があることを強調した。
だが、先に書いた通りインテル・マイアミ側は欠場原因はケガだったとしており、契約に照らしても免責事項の範囲となる。つまり、香港政府側は繰り返し、自分たちには落ち度が無かったことを強調するばかりで観客の不満解決への動きは見られず、当然のことながら激しい批判の声は弱まらなかった。
あまりの批判の激しさにタトラー・アジア側が閉口したのか、「1600万ドルの賛助金申請を撤回する」と発表。人々を失望させたイベントに税金が投入されるという事態は、どうにか回避された。
だが、人々の心には疑問が残った。それは「メッシとスアレスの欠場は、本当にケガが原因だったのか?」という点である。