金銭感覚も変化、「高価なモノ」から「安近短な体験」へ

 大学で教える友人は、「今の若者は就職が困難になったし、勤務態度を評価するシステムが普及したこともあって、みんな必死になっている。お客さんから悪い評判があるとクビになることもあるからね」と話す。さらに、「若者たちは今の困難な時代を嘆きながらも、たくましく生きようと努力している。一人っ子が多い中で、これまでお金に困っていなかった人まで、金銭感覚に変化が見られる」と続けた。

 最近、中国の若者の間では「節約志向」が広がっている。かつてはメンツを重んじ、無理をしてでも流行を追いかける傾向があったのに対し、今や他人の目を気にしない、無駄遣いを避ける、必需品や低価格の商品を選ぶように変わってきたという。上述の知人は、「モノよりも、今は旅行や文化活動にお金を使う傾向がある。『特殊兵式旅行』や『City Walk』などが新たなトレンドとなっている」と話す。

「特殊兵式旅行」とは、短時間で多くの場所を巡り、できるだけ少ない費用で旅をする新しいスタイルのこと。また、「City Walk」は、身近な街の文化や歴史的なスポットを探索して楽しむ街歩きを指す。こうしたスタイルは、節約を重視する「窮游」(節約旅行)とも呼ばれている。日本の「安近短」に近い感覚といえよう。

スタバでラーメンや弁当を食べる

 最近、上海のオフィスビル内のスターバックスで目撃した光景には驚いた。ビルの中で働く人々が、隣のコンビニで購入したインスタントラーメンや弁当を持ち込み、スタバで何も注文せずに堂々と食べて、水筒の水を飲んでいたのだ。

 同伴していた友人は、「そんなの、全然珍しくない。よくあること」と話していた。しかし数年前までは、スタバのコーヒーを手に、朝、オフィスビルのロビーを闊歩する姿が、働くエリートたちの典型的な風景だったのだ。この変化には隔世の感があった。ちなみに現在では、多くの人々がスタバではなく、ラッキンコーヒーの9元の格安コーヒーを買っているという。

 かつて、中国の大学生たちは社会に出たら「大金を稼ぐ、青春を謳歌する」と意気込んでいた。現実が厳しくとも、時代に翻弄されても、彼らはたくましく堅実に生きる姿勢を見せている。この態度は彼らの内に秘められたたくましさを示しているのか、それとも本当におとなしくなったのか、どちらにせよ彼らが中国の未来を担うことは間違いない。不安と期待が交錯するこの感情は、筆者だけが抱いているものではないと思う。