「やりたいことを簡単に見つける方法を教えましょう」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
「やりたいこと」が見つからない?
「何かしたい」
「新しいことを始めたいけどきっかけがない」
「やりたいことが見つからない」
そういった「自己実現」は人生の大きなテーマのひとつです。
キャリアアップや転職、は日常茶飯事となり、趣味や生きがいなどがないと人生を損しているように感じたりと、それに伴って「自分のやりたいことは何か?」という問いを自問自答する人が増えています。
しかし、この問いに対する答えを見つけるのは、意外と難しいものです。
なぜなら、「やりたいこと」の定義があいまいだからです。
「やりたいこと」と聞いて思い描くのは、自分の好きなこと、周りから尊敬されること、社会的に意義のあること、収入に繋がることなどなど、さまざまな定義がされるでしょう。
しかし、そんなふうに考えれば考えるほど、「やりたいこと」のハードルはどんどん高いものになってしまい、行動に移せずに頓挫してしまうことになるでしょう。
その結果、本来楽しむべき人生の時間を、「やりたいこと」を見つけるために費やしてしまい、本末転倒となってしまいます。
では、どうすればいいのでしょう?
まず、私たちは「やりたいこと」に対する考え方を少し軽やかに変えてみましょう。
私たちは「やりたいこと」として捉えると、どうしても高尚なもの、社会的意義や達成感などを無意識に考えてしまいます。
ですが、考えれば考えるほどハードルは高まってしまい、どんどん実現不可能に感じてしまいます。
なりたい自分を「妄想」するところから
そこで、「やりたいこと」ではなく、あなたの「妄想」として考えるのです。
これにより、選択肢が広がり、行動に移しやすくなります。
たとえば、「将来は大きな家に住んで、家族と幸せに暮らしたいな」とやりたいことを定めるとき、その実現のためには、節約や結婚、昇進のための努力や資産運用など、様々な困難を「現実」と捉えてしまい、「どうせできるはずがない」と言って始める気力がそがれてしまいます。
ですが、それがあなたの「妄想」であれば、どれだけ考えようが自由です。
「お金持ちになってアレが買いたい、コレも欲しい」
「魅力的な人になって異性にモテたい」
あなたが満たされていないと感じる欲求や欲望を見つめることが大切です。
日本に住む私たちはある種の閉塞感を感じながら生きています。
それによってか、欲を出したらばちが当たる、そう無意識に考えてしまって、ほんとうに自分が欲しいと考えているものから目を逸らしがちです。
ですが、「妄想」ならば、どれだけしようがその人の自由です。
「そんなことを言っても、どうすればよいかわからないよ」
そう感じる人は少々、情報のインプットが過剰になっているかもしれません。
人間の「妄想」はヒマでやることがないときに膨らみます。
現代社会では欲しいと思えばいつでも情報が手に入る情報過多社会です。
だからこそ、あなたが持つ「妄想」や「空想」にふける時間を意図的に作ってみてください。
これら全てがあなたの「やりたいこと」になり得るのです。
もしじっとしていられない性分ならば、思い切って自然のなかを散歩してみてください。
人間の創造力は動いているときにこそ発揮されるというデータもあります。
まずは外に出て、古の文豪や哲学者のように空想を膨らませる時間を増やしてみましょう。
「妄想は大きく、実行は小さく」
さて、あなたの欲求に向き合うため、妄想や空想に浸るうち、あなたの欲望が膨らんできたかもしれません。
そんな妄想や空想を「やりたいこと」に消化するための、三つの鉄則を覚えておきましょう。
1つ目は、始めるときは小さなことから。
2つ目は、途中で変わってもOK。
3つ目は、数に制限はない。
この3つです。
とにかく「始めやすいことからやる」という認識を持ちましょう。
私たちはしばしば「やりたいこと」=「生きがい、人生」みたいに重いものと捉えがちです。
しかし、だれでもはじめの一歩は小さいものです。
小さなことでも、自分の理想に近づけるなら、それも立派な「やりたいこと」の一部なのです。
たとえば、「料理人になって自分の店を持ちたい」という妄想がどんどん出てくるようになったなら、いきなり転職を考えるんでなく、「自分の食べたいものを自分で作ってみるか」とか、「料理系YouTubeから初めてみるか」など、あなたがはじめやすい小さな取り組みから実行に移してみると良いでしょう。
どんなに小さいと思うことでも、まずは始めてみることが大切です。
これもまた、あなたの「やりたいこと」の一部なのです。
何歳からでも「やりたいこと」を始めるのに遅すぎることはありません。
人生はまだまだこれから。
自分らしい「やりたいこと」を見つけ、それに向かって一歩一歩進んでいくことで、より充実した毎日を送ることができるでしょう。
だからこそ、妄想したり、空想する時間をもう少し増やしてみてください。
「そんな簡単に妄想なんてできないよ」と感じることもあるでしょう。
そう感じたときには、スマホを閉じて、映画や小説、歌劇や寄席など、ふだんとは違うエンターテインメントに興じてみましょう。
あなたのやりたいことのヒントは、意外なところに転がっているかもしれません。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。