セカンドキャリア写真はイメージです Photo:PIXTA

「セカンドキャリアだからこそ、自分のやりたいことに挑戦しましょう」と一般的にはよく言われる。だが、「自分が本当にやりたいことが何か、わからない」と言う人が、意外なほど多い。日本人は若者もシニアも「本当にやりたいこと呪縛」にとらわれがちだ。女性のキャリア研修を手掛ける筆者が、三つの解決法を指南する。(Next story代表 西村美奈子)

本当にやりたいことが見つからない?
「呪縛」から抜け出す唯一の方法とは

 会社勤めをしていると、基本的には上司から指示された仕事をこなすことになる。自分の望む仕事ばかりとは限らない。そんな仕事を長くやってきた人ほど、定年退職後のセカンドキャリアは、「自分のやりたいことをしたい」と考える。定年後の指南書の多くも、「自分のやりたいことを第一優先に」と説く。

 筆者も主催する研修で同じように、「セカンドキャリアだからこそ、自分のやりたいことに挑戦しましょう」と言っている。だが、「自分が本当にやりたいことが何か、わからないんです」と言う人が、意外なほど多い。

 木内美枝子さん(仮名、58歳)は、これまでさまざまな職に就いてきた。大学卒業後に入社した出版社での仕事は面白かったが、早朝から深夜まで仕事に追われる生活は、将来家庭を持ったら続けられないと入社5年目に見切りをつけた。外資系企業に転職し、海外赴任も含め、休むことなくずっと働き続けてきた。

 周囲が結婚して家庭に入っていく中、木内さんには「女性も仕事を持って自活していくべき」との思いがあった。が、運悪く、勤め先が日本から撤退することに。その後は、語学力を生かして複数の職を重ねてきた。人からうらやましがられるような華やかな仕事も経験した。

 ところが結局、どれも自分が本当にやりたかった仕事ではなく、「とりあえず生きていくために、必死で働いてきたのが実態です」と木内さんは言う。3歳下の妹は看護師で、「患者のために働くことが生きがいだ」と言ってのける。そんな妹を見ると、どうしてもモヤモヤしてしまう。自分も長年頑張ってきたのに、それでも、本当にやりたいことが見つからない。50代後半で体力の衰えも本格化し、「諦め」の胸中になりつつあると言う。

 バリバリと働いてきた女性で、木内さんのような心境の人は案外、多い。共通するのは、目の前の仕事に誠心誠意、取り組んできたこと。そしてセカンドキャリアを考え始め、「これからは本当に自分のやりたいことをするわ!」と意気込んでいる。でも、それが見つからない。定年のタイムリミットはどんどん近づいてくる。定年延長・再雇用でタイムリミットが少し先延ばしになっても、焦りは募るばかり…。

 筆者が主催するセカンドキャリア研修に集まる女性は、大きく3パターンに分けられる。

(1) 自分のやりたいことがある程度見えていているのに、最初の一歩が踏み出せない人
(2) 「健康に関わることをしたい」「地域に関わっていきたい」など、なんとなくやりたい方向性は見えているが、具体的に何が自分にできるかわからない人
(3) 「いったい自分は何をしたいのか、どうしたらいいかわからない」という人

 どのパターンの人も、前向きな気持ちは持っている。自ら研修に参加しただけでも、意識は高い。その多くが、「自分が本当にやりたいことを見つけたい」と口にする。それでは次のステップに進むためには、どうしたらいいか。それぞれの解決法をお伝えする。