新ビジョン・ミッションに対する反応
佐宗 この新しいビジョン・ミッションは、どんなところがポイントだと小沼さんは考えていらっしゃいますか?
小沼 「社会課題が解決“され続ける”世界」というビジョンは、とてもユニークだと言われますし、私たち自身もそう思っています。佐宗さんからも「社会課題が解決“される”世界」を目指さないのですか?と質問されたと記憶しています。
でも、それは違うんです。社会課題に対する関心は高まっているけれど、それを本気で自分ごととして解決しようとする人はそれほど多くないですし、解決策がどんどん生まれているような状況でもありません。その差分を減らしていくことを、目指したいと思ったんですよね。
それに、そもそも社会課題は人間がいる限りつねに生み出されます。新しい社会課題が出てきても、それを解決しようとする人がどんどん出てくるような、そういう世界観を描きたかったんです。そう伝えると、「解決“され続ける”」という表現がすばらしいと言っていただけます。こういうビジョンにしてよかったなと思います。
佐宗 新しいビジョン・ミッションを導入したことで、どんな効果がありましたか?
小沼 大きかったのは、ここ数年で一気に組織のなかでミドルリーダー層が育ってきたことですね。その背景には、今回のビジョン・ミッションを、今後取り組んでいく3つの事業領域の戦略(「EMPOWER(エンパワー)」「CULTIVATE(カルティベイト)」「CO-CREATE(コ・クリエイト)」に紐づけたことがあるのではないかと思っています。
それぞれの事業をミドルリーダーに任せられるようになりましたし、お互いが「ビジョンのために」という意識をベースにしながら別の部門と対話できるので、組織として一体感を失わずにいられます。
正直なところ、ビジョン・ミッションを改定する前は、こうした理念を推進力にできているメンバーはあまりいなかったと思います。しかし、いまではミドルリーダーをはじめ、メンバーも安心感を持ちながら働けるようになったと思いますね。
佐宗 そういう具体的な成果があったというお話は、理念づくりをお手伝いした立場からすると、ものすごくうれしいですね!
「留職」という一つの強い事業だけで戦っていたときと比べると、現在のクロスフィールズには大小さまざまな事業がいくつも出てきていますよね。そのなかには、これまでとは少しベクトルが違うものも当然ある。そういう段階には、経営者は自分の組織をどうまとめていけばいいのかに悩むものだと思います。3つの事業領域を包含するビジョンが生まれたことで、きっと組織を大きく変えるインパクトが生まれるだろうなという予感はしていました。