「会社に対する不満が蔓延している」、「なぜか人が辞めていく」、「社員にモチベーションがない」など、具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、近年話題の「組織開発」というアプローチだ。組織開発では、「対話」を通してメンバー間の「関係の質」を向上させていく。そんな組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介したのが、『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)だ。本記事では、発売後即重版となった本書の出版を記念して、組織開発的な観点から職場にありがちな悩みの改善策を著者に聞いてみた。

会社の経営理念、二流の経営者は「勉強させる」、では一流は?会社の経営理念、言えますか? Photo: Adobe Stock

だれも知らない経営理念。そんな会社で大丈夫?

――企業のビジョンや果たすべきミッションを言語化した経営理念。社員数の増加に伴って、当初は大切にされてきた経営理念が、うまく浸透していないのではないかと感じる場面が増えたと感じる経営層も多いのではないでしょうか。“押しつけ感”がでないよう、経営理念をうまく社員に理解してもらうにはどうしたらいいのでしょうか?

 昔から大切にしてきた(あるいは新しくつくった)経営理念が社内で語られなくなり、形骸化してきている――。

 こんな悩みを経営層や、ミドル層のベテラン社員からお聞きすることがあります。

 また、若手社員が「経営理念って言われても……」と扱いに困り、戸惑っておられる様子を目にすることもあります。

 ちょっと悩ましいこうした状況を、組織開発の視点で見てみるとどうでしょうか。

 それぞれが異なる立場で経営理念をとらえることが、かえってお互いを分かり合えなくなっているかも知れません。

 例えば、次のような食い違いがよく見られます。

経営層「経営理念は、当社の歴史と文化、創業者の思いをまとめたもの。全社員に身につけてほしい。もっとミドル層・若手社員は勉強してほしい。」

 

ミドル層「大事であるとは思うけれど、自分も人に教えるほど理解したり、実行できていない。部下に伝えるのは難しい。経営層は若手社員の感覚を分かっているのだろうか?」

 

若手社員「言っていることは分かるけれど、理想論のようで共感はできない。実際の職場、自分の仕事とはかけ離れている。そもそも上司も口だけで実行していない気がする。」

 お互いを分かり合うために経営理念を用いるには、どんな工夫をすればよいのでしょうか。

たった5分の「対話」で経営理念が浸透する

 おすすめするのは、身近な仕事体験を話し合い、これを経営理念で意味づける短時間の「対話」です。

 朝礼を5分延長して、誰かに最近の印象的な仕事の話を自由にしてもらってもよいでしょう。

 テーマは自由です。例えば厳しい要求に応えてお客様に感謝していただけた体験でもよいし、困っている時に職場の先輩がさりげなく助けてくれた体験でも結構です。

 その上で、みんなでその体験にはどんな意味があるのか、どんな学びがあるのかを経営理念を使って話し合うのです。

 こうすると、経営理念に触れながら、職場の仲間の仕事内容やこだわりを知り合うことができます。

 経営理念は本来、働く一人ひとりを共通の目的や目標に向かってまとめる力があります。

 気軽な対話に経営理念を取り入れて、みんなの気持ちをそろえられてはいかがでしょうか。