「トヨタ式カイゼン」の伝道者が、アマゾンに転職して驚いたこととは?Photo:Nathan Stirk/gettyimages

日本最強企業・トヨタ自動車の競争力の源泉は、「カイゼン」にある。同社で13年働きカイゼン思考を身に着けた筆者は、AmazonやITスタートアップに転職、その後企業を経て、さまざまな企業の「カイゼン」を行っていく。本稿は、川越貴博『経営課題をすべて解決するカイゼン思考 利益最大化・資金繰り安定・組織健全化』(現代書林)の一部を抜粋・編集したものです。

スピード感や要求レベルが
桁違いだったAmazon

 トヨタ自動車に13年勤めた後、パン製造会社に4年ほど在籍して、私は再び転職することになります。

 当時、ITに関心があり、またECサイトの黎明期でもありました。そこで、次の職場に選んだのがAmazonでした。

 配属されたのは、最先端のシステム・設備が導入されたAmazonの物流拠点であるフルフィルメントセンター(FC)です。

 自社や3PL(物流機能の委託業者)のスタッフのマネジメントを総合的に行うポジションで仕事をさせていただくことになりました。

 Amazonにもトヨタウェイのような行動指針がありました。14カ条からなる「リーダーシップ・プリンシプル」というものです。メンバーは常にこれを基準に物事を考えます。

 驚いたのは、外資系でドライなイメージがあったのに、マインドはむしろ日本的な印象だったことです。

 たとえば、よかれと思い、現場でさまざまな提案やカイゼンをしていたところ、「お金はかかっていないし効果がすごくあるのはわかる。だけど、周りを巻き込んで整合性をとってからやるべきだし、当然、上司の承認も必要だ」といった感じでした。

 それまでとは少し違う環境にアウェイ感を抱きながら、1年ほど在籍しました。

 Amazonは当時から最新のソフトウェアやIoTを積極的に導入しており、そのへんを吸収しようと意識していました。

 また、それまで勤めた会社ではBtoBの商売しか見てきていませんでしたが、AmazonはBtoCのビジネスモデルで、コンシューマーのニーズへの対応やスピード感などを目の当たりにしてとても勉強になりました。

 非常に特殊な企業で、現場で要求されるレベルもスピード感もケタ違いでした。

 Amazonには入社するときから自分のなかで裏テーマを決めていました。どういうソフトウェアを作り上げていて、それがどういうロジックになっているかなど、自分が起業するときに備えてシステムの構造を理解することが大きな目的でした。

 Amazon退職後はITのスタートアップ企業2社の役員を任せていただくことになりました。

 そこで最も学んだのは企業の資金繰りについてです。

 株主や銀行に対して事業のプランニングなどを説明する際も、カイゼン思考がなければ相手を説得できません。