「当社はいまこういう状況で、こんな姿を目指しています」「そのために現在こういうアクションをとっています」「それに対してわれわれはこう評価し、こう分析しています」。

 資金調達のための説明を行う際も、まさにカイゼン思考のフレームワークが活かされました。

 既存の企業の事業再生とはやや違って、スタートアップ企業の経営者にとって最も重要なのは「お金を人からお預かりしている」という感覚です。

 それに対して、どのような成果を上げて、どんな価値を提供できるかを考えなければなりません。0を1にするために、どのような信憑性を与えて、どう行動できるかを意識していました。

「コンサルタント」ではなく
あくまで「アドバイザリー」

 こうして、多様な立場・環境でカイゼンのノウハウを学んだ経験を経て、私は一念発起してTESIC株式会社を立ち上げました。

 案件内容は多岐にわたります。

 メーカーの案件では業務プロセス改善が中心になります。標準作業の作り込みなどはトヨタ式カイゼンを応用して顧客ごとにアレンジします。

 物流系ではオペレーション管理やSCM管理(サプライチェーンマネジメント)、システム系などの相談を受けています。

 ときには、組織改革の相談も受けます。財務や営業、マーケティング、人事評価や採用などの案件の依頼もあります。

 また、スタートアップの資金調達面のサポートも行っています。

 こう説明すると、「コンサルタント」をイメージする方もいるでしょう。でも、私は「アドバイザリー」という呼称にこだわっています。

 コンサルタントは会社に入り込んで業務改善を行いますが、アドバイザリーはカイゼンの本質を理解していただいて「自分たちで」取り組めるようにお手伝いをする存在です。

 現状を把握しプランを立てて提示するというのがコンサルティングの常道なのですが、私の場合、そうしたやり方がどうにも性に合わないのです。おそらく、トヨタイズムが染みついているのでしょう。

 実際、当事者である企業側が動こうとしなければ、何も始まらないし、現状は全く変わりません。

 私のやり方は、トヨタの「現地現物」の哲学に従って、まず現場に足を運んで状況を見せてもらいます。可能であれば現物にも触らせてもらいます。体験させてもらい、時間軸に沿ってプランを作り、クライアントと一緒に動いていきます。