米家電量販店大手ベストバイ元会長兼CEOのユベール・ジョリー氏米家電量販店大手ベストバイ元会長兼CEOのユベール・ジョリー氏 (C)Pascal Perich

欧米企業では、経営が苦境に陥ったとき、人員整理を行って会社を立て直すことが一般的だ。しかし、米家電量販店のベストバイでCEOを務めたユベール・ジョリー氏は、「人員整理を行うのは最終手段」と考えて改革を進め、瀕死状態だった同社を再建した。同社を復活に導いた考え方とは。また、現場を重視したジョリー氏が心がけていたこととは。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

瀕死のベストバイを
復活に導いた「考え方」

佐藤智恵(以下、佐藤) 著書『THE HEART OF BUSINESS(ハート・オブ・ビジネス)――「人とパーパス」を本気で大切にする新時代のリーダーシップ』の中で印象的だったのが、「会社が苦境に陥ったときこそ人を大切にしなければならない」という考え方です。一般的に欧米では、「会社を再建するためには人員整理は不可欠だ」と考えられていますが、なぜそれとは違った手法でベストバイを立て直そうと思ったのでしょうか。

ユベール・ジョリー(以下ジョリー) 実は私がその考え方を学んだのは、今からおよそ30年も前のことです。マッキンゼー・アンド・カンパニーのパリ支社で働いていたときに、ある著名なフランス人CEOに出会ったことがきっかけでした。

 彼は「企業には三つの要素がある。一つ目は人。二つ目がビジネス。三つ目が財務。そして、その三つの中で企業が最も大切にすべきなのは人である。なぜなら、やる気のある従業員が、優れたビジネスを生み出し、その優れたビジネスが、優れたパフォーマンスをもたらすからだ」と語りました。

 さらに、彼は「企業が苦境に陥ったとき、経営者は真っ先に人員整理を行うが、それは大きな間違いだ。こういうときこそ、『人→ビジネス→財務』という優先順位を忘れてはならない」と断言しました。

「企業を再建する際、最初に行うのは売上高を伸ばす手段を考えること。次に無駄なコストを削減すること。ここで重要なのは、人件費や福利厚生費など、従業員に関わるコストは絶対に削らないこと。この二つに全力で挑んでも、会社が倒産しそうな状況にあるときに、初めて人員整理を考えること」――。彼の考え方は、私の経営に対する考え方を根本から変えるものでした。

 2012年9月に、アメリカの大手家電量販店ベストバイのCEOに就任したとき、彼から学んだ再建方法を忠実に実践していこうと考えました。私は従業員に向かって、「私にとっての優先順位は『人→ビジネス→財務』である。人員整理を行うのは最終手段であり、真っ先には行わない」と明言し、まずは売上高の成長とコストの削減に注力することにしました。

佐藤 CEOに就任して最初の3日間、ミネソタ州の店舗で従業員と同じ制服を着て、店舗で働いたそうですね。なぜあえて現場からスタートしたのでしょうか。