現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。

【医者が教える】「痩せてるから大丈夫」と思う人が知らないとヤバい「隠れ肥満」とは?Photo: Adobe Stock

痩せていても注意すべき「隠れ肥満」の危険性

内臓脂肪痩せている人にも蓄積する

 皮下脂肪組織がすべて燃料でいっぱいになると、余分な脂肪が内臓にあふれ出し臓器につき始める。

 異所性脂肪は、肝臓や骨格筋、血管系、心臓、膵臓の周り、つまり本来あるべきでない場所に蓄積される脂肪を指す。異所性とは「異常な場所や位置」を意味する。

 危険な内臓脂肪蓄積の最大の予測因子のひとつは、単純に食べすぎ(過剰な燃料補給)である。そして、必ずしも過体重や肥満でなくても内臓脂肪は蓄積する。

 痩せていても、食べすぎによって脂肪(燃料)が内臓にあふれ出し、代謝性疾患を発症している人はたくさんいる。これは、一見痩せているのに内臓脂肪の蓄積がある「TOFI(隠れ肥満)」として知られる状態だ。

 細胞が燃料であふれると、ミトコンドリアも影響を受ける。多すぎる燃料に圧倒されて、ミトコンドリアが機能不全や機能停止に陥るおそれがあるのだ。

 つまり、過剰な燃料補給がミトコンドリアを「壊し」、壊れたミトコンドリアはさまざまな形で細胞のインスリン感受性を低下させる。

 第一に、機能不全を起こしたミトコンドリアは、エネルギー産生を減らす(グルコースの処理やインスリンの分泌のために身体が使えるATPが減少してしまう)。

 第二に、余剰燃料の滞留とその燃料を処理する能力の低下が、活性酸素種―ガレージに停めた車から出る排ガスのような燃料産生の炎症性副産物―の増加につながる。

 このエネルギー減少と炎症を誘発する「排ガス」の組み合わせが、インスリンの働きを阻害する。過剰な燃料と排ガスが至る所に充満し、システム全体が壊れ始めるのだ!

こうして身体は本来の機能を果たせなくなる。

(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)