現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。

【医者が教える】「運動」せずに「運動不足を解消」し「ダイエットもできる」意外な方法とは?Photo: Adoebe Stock

運動不足解消のために「わざわざ運動する」必要はない

「座りっぱなしの生活で健康を損なう状況」を覆すことはできるし、そのためにジムに行く必要もない。

「非運動性活動熱産生(NEAT:non-exercise activity thermogenesis)」によってそれが可能になる。これは身体を動かして座りっぱなしの生活の悪循環を断ち切る最も基本的な方法だ。

「非運動性活動熱産生(NEAT)」とは、睡眠、食事、目的を持った運動(スポーツやランニング、ジムトレーニングなど)を除いた日常的なあらゆる活動に費やすエネルギーを表す専門的な表現だ。

 NEATはただ歩き回ったり、バスをつかまえるために走ったり、庭仕事をしたり、掃除したり、せかせかと身体を動かしたりするだけで達成される

 こうした活動は一日を通してかなり積み上がっていく。

 運動は身体に良いが、減量にはさほど効果がないとよく耳にするだろう。

 だが、NEATは減量に効果がある。

 一日を通してどのくらい身体を動かすかが、1回の運動よりもはるかにエネルギー消費に寄与するからだ。

 身体を動かせば、運動中だけではなく、一日中エネルギーの増産を促す信号をミトコンドリアは受け取れる。

 また、NEATは座りっぱなしの有害な影響も中和する。

 一日中身体を動かすと、ミトコンドリアが産生しているATPを使い切り、エネルギー産生の副産物である細胞の排気ガス、活性酸素種(ROS)の増加を最小限に抑えられる

 NEAT活動を行うことは、ガレージの扉を開けて排気ガスを外へ逃がし、ドライブのために車を出すようなものだ。

 私たちは自分の「車(身体)」をガレージに停めたままにせず、乗り回したい(動いて、生活を楽しみたい)はずだ。そのためには、自分の燃料を使う必要がある。

(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)