現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。

【医者が教える】「ストレスが溜まっている人」は「30秒のうがい」をすべき理由とは?Photo: Adobe Stock

ストレス解消には「迷走神経」を刺激せよ!

 心拍変動(HRV)は迷走神経によってコントロールされている。

 迷走神経は脳幹から腹部まで伸びる脳神経で、その間の臓器に広く分布している。

 迷走神経は、心臓や肺、眼、腺、腸から脳へ、脳からこれらの臓器へと信号を運ぶことによって情報を伝えている。

 また、身体の臓器系に関する知覚情報を中枢神経系に伝え、安静時心拍数に影響を与える。

 したがって、迷走神経を刺激して活性度を上げれば(迷走神経を鍛えれば)、HRVを高め、レジリエンスを向上させ、メンタルの回復を促すことができる。

 迷走神経は心拍数とHRVの調整役を担うため、迷走神経の活性度が高い状態(迷走神経が健康で適応力のある状態)は、レジリエンスが備わっているサインだ。

 ここでは次のような関係が成り立つ。

 迷走神経の活性度が高い=HRVが高い=心拍数が低い=回復力がある、レジリエンスが高い

 迷走神経の活性度が低い=HRVが低い=心拍数が高い=回復力が乏しい、レジリエンスが低い

 HRV、迷走神経、副交感神経系のこうした関係により、定期的に迷走神経を刺激すれば、心拍数を下げ、その結果HRVを高めることで、回復モードを引き出せる

 次に紹介する迷走神経刺激法にあなたは驚くかもしれない。

 これらの方法は運動よりもはるかに簡単で、ストレス管理法には思えないだろうが、効き目は抜群だ。

・うがいをする──朝と夜に30秒ずつ

 毎日朝と夜に約30秒間水で勢いよくうがいをすることによって声帯を振動させ、迷走神経を活性化させる。

・舌を磨く──あえて吐き気を催(もよお)す

 タンスクレーパー(舌磨き)を使って吐き気を催すのは、迷走神経を刺激する効果的な方法だ。

・歌う──シャワーを浴びながら歌う

 歌は楽しい迷走神経刺激法だ。うまくなくていい。シャワーを浴びながら歌おう。

・詠唱する──瞑想しながら「オーム」と唱える

 瞑想するときに「オーム」と唱え、身体中にその音を響かせる詠唱は、迷走神経を刺激する良い方法だ。『インターナショナル・ジャーナル・オブ・ヨガ(国際ヨガジャーナル)』に掲載された研究は、「オーム」と唱えることでストレス反応が抑制されることを明らかにしている。

・笑う──誰かと一緒にお笑い番組を観る

 笑うと迷走神経が活性化し、気分が明るくなる。友だちや家族とお笑い番組を観よう。誰かが笑い出すと、他のみんなも笑い出すだろう。笑いは万人に効く迷走神経刺激法だ。

・ガムを噛む──不快感を減らせる

 研究によれば、噛むことは人間や動物のストレスを低減する。ガムを噛むことによって不快感を減らし、ストレス反応を抑え、迷走神経を刺激することができる。

(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)