年季奉公に出された子もいたが、身売りのほうが金になった。いや、決して親はそれを好き好んで行っていたわけではない。しかしそうでもしなければ、生きてゆけない。自分で首をつらねばならなかったからだ。もし遊郭で、いい旦那に目でもかけてもらえたら、玉の輿も夢じゃなかろう。
遊びの中で次に出てくるのがジャンケン。ジャンケンで勝った方の組に入るのだ。このジャンケンはいくらでこの子を買うか、いくらで売るかという駆け引きのシーンが模されていたのである。
合田道人 著
「かってうれしい、はないちもんめ」。これはただジャンケンに「勝ってうれしい」なのではなかった。本当の意味は、安い値段で「買ってうれしい」という人買いの思いだった。親は泣く泣く子を手放す。
「まけてくやしい、はないちもんめ」。そういえば「負ける」は、たとえば「大根一本50円に負けとくよ」とか「この魚、100円に負けてよ」などと使うことがある。そうである。「負ける」とは値段を安くするという意味もあるのだ。
つまり値切られて娘を手渡したのは、思えばくやしいと歌っていることになる。まさしく悲しき貧しき人々の叫びの歌だったのである。
実際、現代でも世界の中には、こうした人身売買が続いている地域がある。この歌を決して古い昔の話だと、片付けてはいけない。