2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、円安や物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はトヨタ自動車、ホンダなどの「自動車」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
グループ内「3社」で不正続出も
トヨタが業績上方修正のワケ
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の自動車業界5社。対象期間は2023年8~12月期の四半期(5社の対象期間はいずれも23年10~12月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・トヨタ自動車
増収率:23.4%(四半期の営業収益12兆411億円)
・ホンダ
増収率:21.4%(四半期の売上収益5兆3901億円)
・日産自動車
増収率:9.5%(四半期の売上高3兆1081億円)
・スズキ
増収率:7.3%(四半期の売上高1兆2831億円)
・SUBARU
増収率:21.4%(四半期の売上収益1兆2829億円)
自動車業界の5社は軒並み増収となった。中でも、トヨタ自動車、ホンダ、SUBARUは20%超の大幅増収を果たした。この3社は24年3月期の通期業績予想をそろって上方修正するなど絶好調だ。
詳細な数字は後述するが、このうちトヨタ自動車は第3四半期累計決算でも売上高が2割超の増収となり、営業利益・純利益が「約2倍」に拡大するなど驚異的な伸びを見せた。
ただし、トヨタ自動車では23年12月、完全子会社のダイハツ工業で新たな認証不正が発覚。今回分析対象とした四半期からは外れるが、24年1月には源流企業といえる豊田自動織機でも新たなエンジン不正が露見した。今後はそうした不正の悪影響が決算を直撃するとみられる。
さらにいえば、トヨタ自動車では22年3月に傘下の日野自動車でもエンジン不正が発覚しており、その補償などもいまだ尾を引いている。グループ内で不祥事が相次ぎ、その対応に追われる中で、なぜトヨタ自動車は通期業績予想(売上高・営業利益・純利益)を引き上げることができたのか。
次ページでは各社の増収率の推移を紹介するとともに、トヨタ自動車が不正の悪影響を跳ね返せる理由について詳しく解説する。