急成長企業で起きたトップ解任「クーデター騒動」関係者も固唾をのむ大混乱の行方は?写真はイメージです Photo:PIXTA

後継者難の中小企業に対して、M&Aを活用して廃業してしまうのを回避しようとの機運が高まっている。「日本M&Aセンター」をはじめとするM&Aの仲介会社が売りたい会社と買いたい会社をマッチングして、事業承継を後押ししているのは周知の通りだ。しかし、なかには急ピッチで多くの会社を買収してしまった結果、管理体制が追い付かず、買い手側の経営がおかしくなってしまうケースも出てきた。(東京経済東京本部長 井出豪彦)

株式上場を目指す中で
大物経営者が次々と合流

「日本マニュファクチャリングホールディングス(HD)」(東京都港区)は2017年設立で、製造業のプラットフォームを目指している。代表は田邑元基氏。東芝やリクルート、佐川急便などでの勤務歴を経て、2009年に墨田区内で「非接触テクノロジー」(現・HS Technology)という会社を創業した人物である。

 日本マニュファクチャリングHDを持ち株会社として後継者難などの中小製造業の買収を積極的に進めてきた結果、ホームページによればグループ会社数は38(米国の2社を含む)もあり、グループの売上高合計は266億円(2023年11月時点)に達しているという。

 子会社は事業分野ごとに「FA機器製造グループ」「金属加工製造グループ」「建築資材物流製造グループ」「樹脂・特殊加工製造グループ」「食品製造グループ」「半導体製造グループ」の大きく6つにセグメンテーションされている。昨年10月に「MJG」からいまの社名に変更し、将来の上場を視野に連結経営体制を強化してきた。

 実際、上場を目指すにふさわしい大物経営者が次々合流してきた。まず昨年4月に「代表執行役社長兼取締役」なるポジションに就いたのは元日立金属社長の平木明敏氏。さらに同年7月に分林保弘氏と千本倖生氏が相次ぎ社外取締役に就任した。

 分林氏は日本M&Aセンターの共同創業者のひとりで、現在も名誉会長の職にある。日本マニュファクチャリングHDのM&Aはこれまで主に同社が仲介してきた経緯がある。千本氏も第二電電(現KDDI)の創業に参加し、携帯電話事業の立ち上げなどでも知られる大物経営者。2015年には再生可能エネルギーの「レノバ」の代表取締役会長に就き、同社を上場に導いた。現在は同社の名誉会長となっている。

新代表の代理人弁護士名で
取引先へ「警告書」を送付

 ところが、昨年8月に最初の変調が表れた。平木氏が就任からわずか4カ月余りで取締役を辞任し、執行役員技術本部長に降格となった。それに伴い田邑氏が代表取締役会長から代表取締役執行役員社長CEOとなった。

 さらに昨年11月14日。今度は取締役会で“クーデター”が起こった。田邑氏が代表を解任されたのだ。取締役7人のうち、田邑氏を除く6人全員が解任に賛成したという。