昨年は7年ぶりのニューアルバム「72シーズンズ」もリリースし、4月からはそれに伴うワールドツアーもスタート。各地で金曜と日曜に公演を行い、2日間で同じ曲は演奏しないという特殊な形式で、ツアー日程には数万人規模のスタジアムがズラリと並んだ。

 8月にはテキサス州アーリントン公演のライブ映像を世界中の映画館で上映。ここで日本のファンも、大規模な演出が次々に繰り出される圧巻のパフォーマンスを堪能。来日への期待をさらに膨らませたが……来日ツアーのアナウンスは一向にない。

 大物アーティストの来日が次々に行われているのに、メタリカはなぜ来ないのか。メタルでは日本を代表する音楽評論家の伊藤政則氏はこの理由について「けっこう悲しい話になるんだけども……」と切り出した。

日本では状況が特殊

「僕もたくさんのファンから『メタリカはいつ来ますか』って聞かれるんだけど、それは君たち次第だよと。1人が200人ずつぐらい友達を連れてこないと実現は難しい状況だから。何万人も動員している海外では、それこそテイラー・スウィフトやエド・シーランも聴くような人もメタリカのライブに行っている。でも日本では、メタルファンはそういったアーティストも聴くんだけども、逆にテイラー・スウィフトやエド・シーランが好きな人はメタリカを聴いていない。メタルのライブには『メタル好き』しか来ないのが一番の問題だね。これでは大規模動員は見込めない」

 海外アーティスト招聘に携わるウドー音楽事務所の招聘興行グループ部長・一之瀬亮氏もこの点には同意見だ。

「『ヒットしているものは何でも聴きます』という人がたくさん来ないと、ドームクラスの会場は埋まりません。洋楽の中でもロック、特にメタルに関して日本では状況が特殊で、メタル人気そのものが村社会的というか、メタリカで言えば80年代のファンがそのまま年を取っているようなイメージなんですよね」