ヨーロッパや南北アメリカではメタルフェスが多数行われており、どれも大盛況だ。筆者は昨年10月、カリフォルニア州で行われた巨大メタルフェス「パワートリップ」を現地で鑑賞したが、広大な会場を埋め尽くした観客の中には老若男女、家族連れも含め実に幅広い層が含まれていた。これは日本のメタルフェスでは見られなかったことで、しかも日本最大のメタルフェス「ラウドパーク」は2017年を最後に開催休止となっている(2023年に「一度限り」として復活)。

「パワートリップは、前の方のエリアにはセレブがいっぱい来ていた。日本じゃメタル系のライブにセレブなんていないでしょ? 彼らが来るのはせいぜいローリング・ストーンズやマドンナあたりまで。欧米では音楽は日常のものなんだけど、日本ではいまだに、ロックは心のどこかで『黒船』のままなんだよね」(伊藤氏)

 欧米と日本でこれほどの「メタル格差」が生まれてしまったのはなぜなのか。そのカギの一つはメタリカが1991年に大ヒットさせたアルバム「メタリカ」だったと、伊藤氏は語る。

「『エンター・サンドマン』というバンド最大のヒット曲も生んだあのアルバムで、メタリカはそれまでの速くてザクザクした音楽性を転換した。それでファンの裾野が大きく広がって、彼らのライブにも『普通の人』が来るようになったんだけど、メタルファンからは『裏切り者』とか『メタルじゃない』と大ブーイングだったんだよね。特に日本ではその声が強くて、メタルの外側にファン層が広がっていかなかった。これは日本のメディアの問題かもしれない。日本には音楽を正しく解釈して俯瞰できるジャーナリストがいなくて、『メタリカはメタル』という認識のまま。だから他ジャンルとのファンの流動性が確立されなかったんだよね」