1928年生まれのイタリアの作曲家、エンニオ・モリコーネが2020年7月に91歳で他界した。映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」はその5年前、16年からジュゼッペ・トルナトーレ監督が製作をスタートしていた。この映画は巨匠モリコーネの作曲とオーケストレーション(管弦楽法)のプロセスが詳細に描かれた大長編ドキュメンタリーだ。イタリアで21年に公開され、日本では22年12月から全国で上映が始まった。(コラムニスト 坪井賢一)
157分の長編でも飽きる暇なく目が離せない
「モリコーネ 映画が恋した音楽家」はドキュメンタリーで157分と、ものすごく長いので、睡魔に襲われることを予想してLサイズのブラックコーヒーを映画館に持ち込んだ。が、全く飽きなかった。というか、飽きる暇もなかった。
映画はおおむね、(1)トルナトーレ監督によるインタビュー、(2)映画作品のシーン、(3)その作品が生まれた背景説明、(4)モリコーネが指揮するオーケストラのライブ、の4段階の積み重ねで構成されている。インタビューの場面はモリコーネ本人が一番多いが、全部で延べ70人強が登場する(正確に数えたわけではなく筆者の目分量)。
157分の間に70人強が登場するわけだから、ざっと1人当たり2分半しかない。作品シーンや映画作家や俳優が入れ替わり立ち代わり出てきて、30秒ほどコメントすると鼻歌でその映画の音楽を歌い、インタビューに答える。すると場面はモリコーネ本人に移り、その音楽のモチーフ(動機)や和音やリズムの秘密を語り、口ずさみ、ピアノを弾く。それが1分弱くらい。そしてそのままオーケストラの演奏場面に移り、鼻歌が管弦楽に移行する。しかも、モリコーネ自身が指揮するライブ映像で、若かりし頃から80歳代までの映像を秒単位で次々に切り替えていく。ちなみに音は変わらないので、音源は1種類だろう。
以上は単純計算で平均化した数値であって、実際は時間をかけたエピソードもいくつか出てくるが、全体的にすごいスピード感で展開していく。飽きる暇がないのはそのためだ。全く目が離せない。
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