Aさん(52歳、会社員)の具体的な例で説明しましょう。
Aさんの父親は78歳で亡くなりましたが、相続開始の10年前に7000万円で土地建物を購入していました。減価償却費を加味したのちの取得費は6000万円になります。そしてこの土地建物を、息子のAさんが相続後4年目に1億円で売却したとします。この場合、
領収書がある場合の税額は (1億円-6000万円)×20.315%=約812万円
領収書がない場合の税額は 1億円×(100% -5%)×20.315%=約1929万円
仮に領収書がなかったとすると、5%しか必要経費を認めてもらえないため、約1117万円も多く税金を払うことになってしまうのです。
生前に領収書を確認しておくことも
立派な相続対策
内藤 克 著
領収書に関しては遺産整理をしているときに不要な書類と勘違いして捨ててしまった場合や、どこにしまってあるかわからない場合などがあるでしょう。
しかし、本人が生きている間に確認しておけば何かしらの手がかりを得ることができたはずです。たとえば、当時の不動産仲介業者に資料がないか確認してもらうとか、建設会社から領収書を再発行してもらうといったことです。
Aさんのケースで生前に父親に確認して取得時の資料をそろえておけば、極端にいえば領収書の紙1枚で約1100万円もの所得税の節税ができたことになります。
「過去の資料をあらかじめ整理しておく」ことも広い意味での相続対策です。可能なら、今すぐに「お父さん、この家を買ったときの書類はあるの?」と聞いておきましょう。