不動産取得価格は非常に重要
絶対に購入時の領収書をなくすな!
そしてこの相続財産の売却に際しては、購入時の領収書があるかどうかで手取り額が大きく変わってきます。いい例が不動産で、不動産登記が電子化された今、昔のように「権利証」を大切に保管する必要性は薄れてきました。むしろ大切なのは「領収書」なのです。
ではなぜ、領収書がそこまで重要になるのでしょうか。
不動産の売却を例に説明しますが、まず譲渡所得の計算は、その不動産の所有期間によって異なります。所有期間が5年超(長期)の場合と5年以下(短期)の場合では税率が異なり、短期の譲渡にかかる所得税は、長期譲渡にかかる所得税のなんと約2倍となっています。
またややこしいことに、所有期間が5年超かどうかの判定は購入日から譲渡日までの期間ではなく、譲渡した年の1月1日現在で判定します。
譲渡にかかる所得税(住民税含む)は次のように計算します。
長期譲渡の場合:{譲渡金額-(取得費+譲渡費用)}×20.315%
短期譲渡の場合:{譲渡金額-(取得費+譲渡費用)}×39.63%
ここでいう取得費は実際にいくらで買ったか(取得価額)とは異なり、減価償却費を加味して計算した金額です。そのため取得価額よりも低い金額となり、利益が出やすい計算になっています。
問題はここからで、相続で取得した不動産の場合は長い年月が経過しているために、「購入当時の契約書や領収書など、取得価額を示す資料がいくら探しても見当たらない!」というケースがあります。この場合、税務署は譲渡価額のわずか5%しか必要経費として認めてくれません。つまり、領収書がないと税金の計算上、きわめて不利なことになるのです。