「トランプ大統領の集会」で潜入ジャーナリストが聞いた、欺瞞と下卑た言葉《Editors' Picks》オハイオ州で支持者に囲まれるトランプ 2020年1月10日 Photo by Masuo Yokota

共和党は、白人中心の党だ。トランプが2016年の大統領選挙で得た票のうち、88%までが白人票で占められている。2018年時点で、アメリカの全人口に占める白人の割合は60.5%で黒人は12.5%であるのと比べると、トランプ支持者の中核が白人であることが分かる。
※本稿は、横田増生『「トランプ信者」潜入一年』(小学館)の一部を抜粋・再編集したものです。敬称略、年齢や肩書は、取材当時のまま。参考文献については、書籍の最後に一覧で表記してあります。

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なぜトランプを熱狂的に支持するのか

 トランプが現れたのは、定刻の午後7時ちょうど。大音量でかかるマイケル・ジャクソンのヒット曲『今夜はビート・イット』に乗って登場した。

 その後も何度か、トランプの支援者集会を見に行ったが、大勢の支援者が待ち受ける中で壇上に立つトランプは、いつも上機嫌で、支援者を見回し、手を振り、時には奇妙なダンスをしてみせることもあった。いつも喜色満面で登場するのだ。

 再選を目指すトランプはこの日も、経済の功績から売り込みを始めた。

「今年に入っても、経済は好調を続け、賃金は上昇、貧困率は急降下し、犯罪も大幅に減っている。アメリカは今や世界の羨望の的なんだ」

「2016年の大統領選挙以来、700万人もの雇用を生み出し、そのうち100万人以上は、製造業や建設業での仕事だったんだ。この数字は、だれも成し得ないと思ったほど高い数字だ」
「ウィスコンシンの失業率も、史上最も低い数字となった。いいニュースだろう」

 トランプの経済運営の手法とは、いったい、どのようなものなのか。

 小さな政府を掲げる共和党の伝統的な手法は、規制を緩和して、税率を引き下げることだ。この日の演説でも、自らの功績をたたえる文脈で「規制」や「減税」という言葉が何度も出てきた。

 政府はできるだけ経済に関与せず、税金による富の再配分にも重きを置かず、市場の自由競争に任せる、という方法で、これは共和党の金科玉条だ。競争原理を重んじる経済を信奉するのが共和党支持者の最大公約数なのだ。