コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏はコンサルティングファーム志願者の「駆け込み寺」として、多くの内定者を送り出してきた。著書『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』では「ファームに入社した人の共通点」「具体的にどんな対策をすれば受かるのか」「入社後活躍する人とは」などについて、史上初めて実際に入社した3000人以上のデータを分析し「ファクトベース」で伝えている。この連載では、書籍から一部を抜粋・編集して掲載する。
価値を生むのは「調べたこと」ではなく「独自の視点」
「インテレクチュアルスキル」という言葉を聞いたことはありますか? コンサルティング業界やその採用のプロセスではよく使う言葉ですが、一般的にはあまり知られていないのではないかと思います。
「インテレクチュアル」は、そのまま訳すと「知的・知性的」という意味です。インテレクチュアルスキルとは、「(コンサルタントとして)知性を感じさせるスキル」と定義できます。地頭のよさとも言い換えられます。
私が求職者に、「コンサルタントには『インテレクチュアルスキル』が求められます」と伝えると、ほとんどの人がロジカルシンキング、論理的思考力とイコールであると理解します。もちろんロジカルシンキングは、コンサルタントにとって極めて重要な必須スキルです。しかし、それだけでは十分ではありません。
私は「インテレクチュアルスキル」を「自身の洞察力をもとに自分なりの意見や考えを作り出すこと」と説明しています。
コンサルタントは、クライアントが「なるほど!」と膝を打つようなアウトプットや気づきを与えることが仕事です。
誰かがいったことを流用したり、調べて見つけたことを伝えたりするだけでは、コンサルタントとしてのバリューはありません(もちろんナレッジトランスファー型やリサーチ型のコンサルティングの場合はこれらがそのままクライアントへの提供価値になります)。
コンサルタントが、自ら得た情報や自身の洞察力をもって気づいたことなどのファクトをもとに、独自の意見や考えを論理的に作り出し、その結論がクライアントにとって意味のあるものだった場合、とてつもないバリューを生み出すことになります。これが、コンサルタントとしての「インテレクチュアルスキル」です。
言葉にするとシンプルですが、実践するとなると、もちろん生半可なことではありません。このようなバリューを出せるようになるまでには、地道な修業・訓練を重ねていく必要があります。
もちろん、面接の中で実際のコンサルタントと同等のレベルを求められることはありませんが、少なくともその片鱗を感じさせる必要はあります。そのため、まずは「インテレクチュアルスキル」を理解し、面接の中で発揮できるようにしないといけません。
「地頭がいい」を分解すると……?
インテレクチュアルスキルは、次の3つに要素分解できます。
①ファクトベースかつ論理的である(ロジカルシンキング)
②独自の考えや切り口・視点がある(洞察力)
③考えて話し出すまでの時間が短い(思考スピード)
相手がコンサルタントでなくても、①論理的でわかりやすく納得感があり、②その人独自の目新しい考えが含まれていて、③しかもその論理展開が速い人の話を聞くと「おっ、いいこというなぁ」と感心しますよね。
この3つは、①→②→③の順に習得することができます。
まずは「ファクトベースかつ論理的に考えられる」ようになり、次に「独自の考えや切り口・視点、自分なりの気づきを盛り込んで考えられる」ようになり、その後にこれらの考え方を繰り返し実践することで徐々に「考えるスピードが速く」なります。
ちなみに、「ロジカルシンキング」で導かれたファクトベースの結論は客観的ですが、個人の洞察力が含まれた「インテレクチュアルスキル」で導かれる結論には主観的な要素が含まれます。面接での「インテレクチュアルスキル」の評価は、面接官やファームによってばらつきが出るのはこのためです。
多くの情報を素早く処理できたことに知性を感じる面接官やファームがある一方で、限られた情報から独自の考えを作り出せることに知性を感じるファームもあります。あるいは豊富な業界や業務、ITに関する知見から解を見出すことを重視するファームもあります。
一方の求職者の側も、人によって考え方の違いや思考の癖などがあります。選考を通して「インテレクチュアル(知性)を感じるポイント」がお互いにフィットするファームを探すことが重要です。
(※本記事は、『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』から抜粋・編集したものです